時をかけるN
□ determination 7/10
「柵じゃない…………檻だ」
いくつもの檻。
冷たく光る鉄の棒で区切られた空間が続いていた。
そしてその区切りの中に、Nを見つけた。
「N!」
「二人とも、来てくれたんだね……良かった。セレビィは、無事?」
「セレビィはまだっ――ていうか、N、それ」
N一人には広すぎる空間を囲む檻。
その無機質な金属の棒に阻まれながらも、ヒビキとコトネはNとの再会を果たした。
しかし二人は、それを素直に喜ぶことができなかった。
コトネはそれを直視してよいのか分からない様子で、開いた口を手で覆った。
「――ああ、大丈夫だよ。もう全て血は止まってるはずだし、一つ一つはそんなに深いキズじゃない」
「え、N……!」
Nは二人の目線が自分の体に痛々しく刻まれている赤にあると気付く。
髪や服も、汚れ乱れている。
暗い檻の中で何があったのか、まだ幼い二人が浮かべた想像はあまりにも衝撃的だった。
「N……っ!」
うまく言葉が見つからず、震える声でNの名前を繰り返すコトネ。
Nは少しバツが悪そうに微笑した。
「ひどすぎる……!」
ヒビキが檻を両手で掴み、力任せに揺らした。
無論、冷たい鉄はビクともしない。
「許せないよ」
Nは感じた。
ヒビキの目が、イッシュのもう一人の英雄のそれと重なったのを。
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