時をかけるN
□ determination 6/10
「ここだ! さっき鍵が閉まってた部屋だったんだね!」
ヒビキとコトネは、銀色の鍵を持って部屋を出た。
そして、先程開かなかった部屋の前に辿り着いた。
「……やった! 鍵が入った!」
コトネが鍵穴に鍵を差し込むと、スッと奥まで入った。
それを半周程回すと、カチッという確かな手ごたえがあった。
「開けるよ、ヒビキくん」
「うん」
扉を開ける。
中はかなり暗かった。
地下ということもあり、元々地上の建物より暗さがあるこのアジトだが、その部屋はダントツで薄暗く思えた。
故意にそうさせたような、淡い光の証明が天井に点在している。その他に光はなさそうだ。
辺りの床には乱雑にダンボール箱が積まれている。
倉庫だろうか。
「N、居る?」
ヒビキが控えめに呼びかける。
「N−! 居たら返事して!」
コトネもそれに続く。
「コ、トネ……?」
擦れた声が聞こえた。
「! N、聞こえる!?」
「ヒビキ? 何で……」
声は聞こえるが、Nの姿は確認できない。
ダンボールの山の奥から聞こえてくるような気がした。
「奥の柵の向こうかしら? 行ってみよう!」
ダンボールを避けて通ると、二人は思わず口をぽかんと開けた。
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