時をかけるN
□ determination 1/10
激しい戦いの名残が、空気となってこの空間を支配していた。
「……戻れ、オーダイル」
「クサイハナ、お疲れ様」
両者がポケモンをボールへ戻す。そして状況はバトル前のそれへと戻った。
「強くなったわね……」
先に言葉を発したのはアテナだった。慈しむように、微笑む。
対し、シルバーの顔は全ての感情を遮断するようにきつく固まっていた。
「言っとくけど、手加減なんてしてないわよ。かなり悔しいわ」
「……フン」
もう用済みだと言わんばかりに、シルバーはアテナに背を向けた。
アテナはその瞬間を計ったかのように、懐から何かを取り出した。
小さな金属の擦れ合う音に、シルバーは最低限の目線をアテナのほうへ向けた。
「あたくしは、この二つの鍵を持っているわ」
金と銀の鍵が、アテナの手の中で淡い光沢を見せていた。
シルバーはアテナの作意が読めず、眉を細める。
「一つは、ラムダが攫ったあの子の居る部屋の鍵」
アテナは銀色の鍵を左手に掲げた。
「もう一つは、アポロとセレビィが居る部屋の鍵」
アテナは金色の鍵を右手に掲げた。
「――どちらを選ぶかしら?」
- 102 -
[prev|next]