時をかけるN
□ 目眩く追憶 9/9
「あっちからだ」
ヒビキは出来る限り小さな声でコトネに囁き、足音を立てずに歩きだした。
「だんだん音が……」
僅かな音を頼りに廊下を進むと、だんだんと声が聞き取れるようになってきた。
「…………だ!」
「……が……!」
「どこかで……バトルしてる?」
「もしかしたらシルバーかもしれない!」
向かった先では、一つの戦いがあった。
「クサイハナ、ギガドレインよ!」
「オーダイル! れいとうビームで迎え撃て!」
ヒビキとコトネは、声がすぐ近くまで聞こえるドアの前に辿り着いた。
「ここから聞こえる……」
ヒビキがドアに耳を近付けて確認する。
声だけでなく、ポケモンが部屋中を駆ける音や技を出す音、そして轟音が響き渡る。ドア越しでもかなりの臨場感がある。
「やっぱりシルバーだわ……! それに、相手は幹部の女の人? 助けに行かなきゃ!」
ドアノブへ伸ばしたコトネの手を、ヒビキが掴んで制止した。
「ちょっと待って。中の様子が……」
「……?」
そのとき、中の戦いは終局を迎えていた。
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