時をかけるN
□ 目眩く追憶 6/9
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その頃のヒビキとコトネは、地下を探索していた。
「ねぇねぇ、ここさっきも通らなかった?」
「えっ? 気のせいじゃない?」
「うーん……」
探索と言えば聞こえはいいが、実際は似たような廊下をぐるぐると回っているだけだった。
「ねぇねぇ、もしかしてあたしたち……迷子じゃない?」
「……気のせいじゃないね」
二人はその場に立ち止まり、ため息をついた。
「ていうか気付くの遅くない!? ヒビキくんがずんずん歩いてくから道知ってんのかと思ったのに!」
「初めて来た場所なのに道なんて分かるわけないじゃん! コトネちゃんが何も言わないから間違ってないのかと思ったのに!」
「…………」
「…………」
「どうする……?」
妙な沈黙の後の末、不毛の議論を止めてヒビキが聞いた。
「どうしよう……?」
疑問を疑問で返すコトネ。
こんな調子では、話はいつまでたっても平行線をたどるだろう。
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