時をかけるN
□ 目眩く追憶 4/9
ガチャ、と扉の閉まる音がした。
シルバーは自分の入った部屋を見回した。
地下なだけあって窓は一つもないが、その点を除けば普通のビルとさほど変わらないだろう。
小さな会議室のように長机がいくつも置かれているが、何故かそれらは全て部屋の隅に寄っている。
「この辺の部屋はあまり使わないから、したっぱたちがバトルの練習をするのに使っているのよ」
シルバーの目線を窺知したように、アテナが説明した。
「どうでもいい」
シルバーはぶっきらぼうに返す。
「あら、随分冷たくなったのね。――――シルバーさま」
「……っ!」
息が詰まる。
いい知れぬ感情がこみあがる。
それは、追憶などという生温いものではない。
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