時をかけるN
□ タイムスリップ 5/11
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ここまで混乱する事態など、今までにあっただろうか。
無意識の中でバランスを崩したNは、冷たい床の上に膝をついていた。
また、瞬間移動のような現象に遭ってしまった。
時空や時間を司る特異なポケモンがいるという話は、大昔の伝記などで知っている。
もしかしたら、あの不思議な祠から出てきたこの可愛らしいポケモンも、そう云われるものであるかもしれないという可能性は捨てられない。
そうだったところで、この状況をどう処理すればいいのか。
頭の回転の速いNにも到底分からない問題だ。
「――そうだ。キミの名前は何ていうの?」
辺りに誰も居ないことを察したNは、立ち上がり目の前のポケモンに聞いた。
「ビィ!」
ポケモンは動揺しているようだったが、Nから危険性を感じなかったからか、一定の距離を保ちつつもNに眼を合わせていた。
「そうか、セレビィというんだね」
Nはこんな状況にも関わらず、落ち着いた笑顔を向けた。
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