時をかけるN
□ どこまでも走る 7/7
「滝の裏側って初めて見る……」
ヒビキとコトネは、先ほどシルバーらしき人物が通ったところまで到着した。
入り口に居たときよりも滝の音の迫力が増し、耳のすぐ横で流れているようだ。
「もうちょっと奥かな?」
さらに進んで、完全に滝の裏側に入った。
至近距離に居ても互いの声が聞き取りにくいので、声量を上げる。
「あ! あそこに穴があるよ!」
コトネが指差した先には、大人二人くらいでも優に通れるほどの大きな洞穴。
緊張感を体に纏わせ、その洞穴の中を覗いてみた。
中は思ったより広い。洞穴の割には誰かが住んでいたような生活感すら感じられるほどだ。
そして一番目についたのが、洞穴の中央にある地下へ続く階段なのだが――
「だ、誰だ!!」
「うわっ! ロケット団だ!」
洞穴の入り口にロケット団のしたっぱの男が居た。
二人は驚きながらも素早くモンスターボールに手をかけ、戦闘準備に入る。
しかし男の様子はどこかおかしかった。
「も、もうガキは懲り懲りだ! オレの手持ちはもう瀕死状態なんだ! と、通りたきゃ通れよ!」
怯えたように二人を交互に見て、男は喚いた。
「どういうこと……?」
二人は思わず顔を見合わせた。
「目付きの悪い赤髪のクソ強ぇガキにやられたんだよ! こんなところの見張りなら、弱いオレでもできると思ったのに……」
怒鳴り散らしたかと思うとぶつぶつと愚痴を言い始めた男を横目し、二人は声を合わせた。
「やっぱりシルバーだ!」
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