時をかけるN
□ どこまでも走る 4/7
「そうね……でもあたくしは、戻るつもりなんてないわ」
アテナがランスへ目を移した。
ランスが密かに憧れている、強い瞳だった。
「奇遇だな、俺もだ」
猫背だが大きな背中が、ランスのほうを向いていた。
「クソ真面目な奴だからな、俺様みたいな癒し系が居ないと疲れちまうだろ?」
「あんた……癒し系って…………正気?」
「……う、うっせーな! ちょっとしたジョークくらいスルーしてやれよ!」
「……も……」
みんなで頑張ろう。
そんなノリは、大嫌いだった。
そんな甘えた考えは、大嫌いだった。
――――でも
「わ、私も着いていきますから!」
今だけは、一緒に走りたくなった。
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