時をかけるN
□ どこまでも走る 2/7
「最近のアポロさん、ちょっとおかしくないですか……?」
そう言ったランスの表情は、いつもの彼にそぐわないような弱々しいものだった。
「おめー上司の陰口を堂々と――――まぁ、おまえの言いたいことも分からんではないけどな」
そう言い切ると、ラムダが真面目な顔つきになる。
「てめーの器に見合うモンを持たなきゃ、重すぎて抱え切れねぇからな」
「……?」
「要するに、自分に酔ってんのよ」
ラムダとランスは、いつの間にか傍にいた第三者を目で捉えた。
「アテナさん……」
「人の会話にすぐ割り込む女だな」
アテナはラムダの軽口を無視し、憂いを帯びた表情で言葉を紡いた。
「あたくしたちはただ悪さをしたり金儲けをしたりするコソドロみたいな組織よ。時を支配して伝説を手中に入れたりあわよくば世界を――なんて、大きすぎるのよ」
大きすぎる。
まるでそれは、自分たちの限界を既に悟っているようで。
- 87 -
[prev|next]