時をかけるN
□ どこまでも走る 1/7
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「――それで結局、おまえの目的は果たせたんですか?」
「俺様の目的なんかねぇよ。まぁ、ああいう爽やか青年はいけすかねーけど」
「ラムダらしい意見ですね」
「あ、そうそう。めんどくせぇ千里眼はしばらく使えねぇと思うぜ」
「それは助かります。もっとも今は、私たちが持っている力のほうが面倒臭いものですがね……」
「……はぁ」
アポロが自室に戻るのを見届け一息ついたとき、
「ラムダさんっ」
ラムダの斜め下から、珍しく控えめな声が聞こえた。
「あ? ランスか。何で小声なんだよ」
ランスはその問いかけには答えず、今しがたアポロが入っていった扉を気まずそうに見つめた。
「アポロさんは、中ですか?」
「中に入るけど。何、アポロに用事か?」
「わっ、違います! 呼ばないで下さい!」
「何なんだ、らしくねぇな。なんか言いたいことがあんじゃねーのか?」
口籠もっていると思えば、ラムダが扉に近付こうとすると突然慌てだす始末だ。
少し心配になってきたラムダが問うと、ランスは意を決したように口を開いた。
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