時をかけるN
□ 最優先事項 10/10
「コトネ」
「!」
戸惑うコトネの背中に、普段より少し低いヒビキの声がかかった。
「行こう」
「えっ……」
「これ以上ボクたちの大切な人が傷つけられるのは許せない」
ヒビキの言葉には、強い思いが込められていた。それはコトネにも伝わった。
「……その通りね」
コトネの口角が緩くなり、自ずと笑みが浮かんだ。
「マツバさん、あたしたち行きます……!」
「うん、気をつけてね。僕もすぐに追い付くから」
マツバが開いているほうの手を軽く振った。
ヒビキとコトネは後ろ髪を引かれる気持ちもあったが、それでも、走りだした。
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