時をかけるN
□ 最優先事項 9/10
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「今こっちのほうで凄い音が――――きゃあっ!! マツバさん!」
辺りに響き渡った爆発音を頼りに、コトネとヒビキはマツバのもとへ駆け付けた。
「ごめん、大丈夫だから……油断しちゃっただけ」
マツバは衣服やマフラーをボロボロにして、身体中に炭のような汚れを付けた状態で木に寄りかかって座り込んでいた。
「油断って……、っ! マツバさん、その目――!」
マツバの様子はそれ以外にもおかしかった。
「爆発と同時にヘドロばくだんを食らってね……まぁ何とか直撃は逃れたけど……」
右目を手で押さえ、息を荒くしている。その手の隙間からは、禍々しい紫が溢れ出ていた。
「ど、どくけし! いややっぱり病院に――」
「いやいや、そこまでしなくても大丈夫だけど、しばらくは動けないかもね……」
そう言って笑顔を作り出すマツバだが、その様子はやはり痛々しい。
「うーん……本物のミナキくんでも呼び出して、付き合ってもらうよ。だから僕のことは気にしないで、早くNくんとセレビィを助けだしてほしい……」
「マ、マツバさん……でも…………」
コトネは思いあぐねて、身動ぎもできずその場に立ち尽くしてしまう。
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