すとろべりー
臆病者に武器を(ハヤコト)
俺はジョウト地方で、一番目のジムリーダー。つまり、最弱。
憧れだったジムリーダーを継いでも、所詮親の七光りだと影口をされた。最近はそれも減ってきたけれど、俺の地位は変わらなかった。
俺だって頑張ってる。
でも、頑張ってるのは俺だけじゃないから。
次こそは、と思うけど――
「対戦ありがとう!」
「こちらこそ。俺なんかじゃ、コトネの練習相手にすらならないよな……」
こちらのポケモンは六匹全滅なのに対し、コトネのポケモンはまだ四匹残っている。
「そんなことないよ! まさかグレイシアがやられちゃうなんてビックリしたもん」
彼女はジョウトのバッジを全て集め、殿堂入りを果たしただけでなく、カントーのバッジをも集めてしまったのだ。
ニ地方のチャンプと、ある町の最弱ジムリーダー。
この差は、埋まらない。
前にアカネの奴が言っていたことを思い出した。
『女より下の男はダメや。女に劣等感を感じてしまうんやて』
その通りだ。
傷ついたポケモンに手当てを施すコトネを眺めながら、俺はモンスターボールを握り締めた。
「じゃあ、そろそろ行くね」
いつの間にか治療を終えたコトネは、相棒のメガニウム以外をボールに収め、ジムを出ようとしていた。
「えっ……あ、ああ」
本当は、もっと下らない話でもしたいのに。
俺なんかと話すより、もっと強い人と話したほうが楽しいだろうと考えてしまう。
臆病な俺。
「バイバ――きゃっ!」
俺が顔を俯きかけたとき、コトネがバトルで散らかった床に躓いた。
「コトネ!」
一瞬、頭が真っ白になった。
「……ビックリしたぁ」
気付けば俺は、コトネの腕をしっかりと掴んでいた。
コトネは体勢を整え、俺を見た。
「ごめんね、ありがとー」
「いや、べ、別に……」
「なんかドキドキしてるよ〜」
「!」
彼女は、転びそうになったからドキドキしてるのだろう。
でも、俺は――
「――俺も」
「えっ?」
「俺も、ドキドキしてるよ。コトネ見てると」
何言ってんだ俺。
自分の言葉じゃないみたいだ。
俺は今、どんな顔をしてる?
コトネの頬は、心なし赤かった。
「私だって……」
「え?」
「な、何でもない!」
結局そのまま別れたわけで。
俺は臆病者のままで。
それでも彼女のあの表情を目に焼き付けて、今日もジムを守って。彼女の電話を待って。たまにはこっちからかけてみようかな、なんて考えて。
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少女漫画にしたかった
文書けNEEEEEEEE
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