ぐれーぷ | ナノ

ぐれーぷ

Sweet pea(グリ←ヒビ)

 最初は全然勝てなくて、まだまだガキだと馬鹿にされた。

 それから一生懸命頑張って、初めて勝ったとき、


『お前は本物だよ。強いトレーナーだ!』


 嬉しそうにボクの頭を撫でて、それから一瞬だけ遠くを見つめた。

 彼がどこを見ていたのか、今なら分かることができるけど。

 彼に勝ったことで、ボクは彼に挑む多数のトレーナーやジムトレーナーよりも一歩近付くことができたと思っていた。
 毎日会って、親しくお喋りしていることで、自分が彼に一番近い存在だと――“特別”だと自惚れていた。






「ヒビキは、強いな」


「……?」

 ある日のことだった。

 普段より心なしテンションが低そうな彼が、突然そんな話を始めたのは。


「なぁ、ヒビキ。シロガネ山って知ってるよな?」

 脈略のない話に、とりあえず頷く。

「そこに……なんというか、伝説のトレーナー? とか言われてる、めちゃくちゃ強い奴が居るって噂がある」

「聞いたことあるようなないような……」

 居るとか居ないとか、生きてるとか死んでるとか、多種多様な噂が飛び交っていた。



「そいつ、お前に似てるわ」



「えっ……?」


「幼なじみ、なんだ。あいつ。ずっとライバルとして張り合ってきた奴。今はシロガネ山の頂上で、本物の強さをもつ奴を待ってる」

 吐き出すように言葉を紡ぐ彼を、ボクは何も言えずにただ眺めていた。


「ライバルとか言ってな、俺はあいつに何もしてやれねぇんだ……。あいつの瞳に俺は映らない」

 苦しそうな悔しそうなグリーンさんの声が、ボクの小さな恋心を砕いていった。


「悔しいけど、ヒビキ、お前ならあいつの相手になれるかもしれない。前にも言ったが、お前の強さは本物だ」

「…………」


 心で叫んでた。
 そんなために強くなったんじゃない! ボクは、あなたの瞳に映っていたいだけなのに!

 どんなに叫んでも、変わらない。

 ボクの“特別”はあなた。
 でもあなたの“特別”はボクじゃない。ボクじゃないんだ。



「……強くなんかないですよ」


 あなたの言葉一つで、こんなにも胸が痛いから。

...............

ずっと書きたかった感じの話

グリーンのテンションが低いのは、食料調達に下山してきたレッドと会ったとかそんなんじゃないでしょーか。
まぁ解釈はご自由に……(・ω・`)

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