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弧を描く口唇(アポラン)

「……アポロさん」


 自分に背を向けて机に向かう恋人に、ランスは呼び掛けた。
 アポロは振り返らないで返事をした。

「何ですか?」

「私のことをどう思っていますか?」

「愛しい恋人ですよ」

 相変わらず机上の書類と睨めっこしたまま、アポロは照れた様子もなく答える。

 そう即答されても、ランスの引っ掛かりは取れなかった。


「サカキ様と私、どちらが大切ですか?」

 恋人の心の大部分を占める重要な存在を知っているからだ。


「うーん、難しいですね……」



 アポロは言葉を濁らせる。
 やっぱりそうだ。


「では、もしサカキ様に“ランスを殺せ”と言われたら私を殺しますか?」



「殺しますね」

 今度は即答した。



「貴方を殺して、私も死にます」


 そう付け足して。


「そうすれば、大切な貴方と一緒に居れますから」

 机に向かったままのアポロの表情は、ランスからは見えなかった。


「……大切なサカキ様とは一緒に居れなくていいんですか?」

 思わず皮肉めいた言葉を口走ると、アポロが初めてこちらを向いた。


 微笑みを湛えて。


「でしたら、サカキ様もご一緒にいけばいいじゃないですか」


 あくまでその笑みは、いつも通りのそれだった。


「それじゃあ、また私は悩んでしまいますよ」

「それはどうしましょうかね……」


 困ったようにクスクス笑う恋人は、やっぱり狂っていると思った。



「……アポロさん」

「何ですか?」


「私はアポロさんが一番大切ですよ」


「……ありがとうございます」


 狂った者についていけるのは、狂った者だけ。









―――――――――――――――

アポランについて考えてたら何故かこうなった。
アポラン好き様にごめんなさい。

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