監視
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「失礼します。」
ちょうど着替えを済ませたところで、(おそらく世話係の)レオ君が入ってきた。
此処に来てから毎日、食事の時間に部屋まで持ってきてくれる。大変だろうなぁ、といってもしょうがない。私も許可が出ない限り部屋の外に出られないのですよ、うん。
『やぁレオ君!朝食ですか?』
私の部屋は1人で過ごすには勿体無いほど広いため、扉から遠のいていた私は走ってレオ君の所まで行った。
『いつもありがとうございますー。』
朝食を受け取り、レオ君の方をみてお礼を言ったが。
何か…ものすごーーーく変な顔してる…吃驚しているのかな?いやいや唖然としてるっていうか、何かおかしかったかなーちゃんと着替えて顔洗ったしー。
『どったの?』
「あ、いえ…すごい寝癖ですね。」
ええ?…寝癖だけでそんなに吃驚すんなや兄ちゃん。誰だって寝癖ぐらいあるんだから!
ただレオ君の反応が結構ショックだったので横にある鏡を横目で見てみた。
『ふぉおお!?』
ガシャン!!
「わっ名前様…!!」
『熱っっ』
うっかりトレーを滑らせてしまい、私の朝食は無残にも床に零れ落ちてしまった。あちゃーどんだけドジなの私…
「大丈夫ですか…!?」
『あ、大丈夫ですよ!大げさだな〜♪それよりせっかく持ってきてくれたのにすんまそん…。』
「いえ…すぐ代わりのもの持ってきますね。」
レオ君が出て行ったときに、再度まじまじと鏡を見た。
なんてことだ……重力に逆らった髪の毛!みたいな。おまけにくるくるぱーだしね〜
これなら驚くのも無理はないよ、あはは!
なんだろ、逆立ちでもして寝てたのかな。それはそれですごいよね
と、とりあえず櫛でとこう。
「お持ちしました。」
『ありがとう!』
今度はちゃんと受け取り、さぁ食べよう。としたがいつもサッサと出て行ってしまうレオ君は今日は私が食べているところを見ている。
珍しいなぁ。また私がドジやらないか見てるのかな。過保護?
『そうだ!どうせなら此処で一緒に食べますー?』
まぁ断るだろうと思って冗談で言ってみた。やっぱり微笑しながら断ってきたけど。
「―――名前様、少し質問が…」
『え?私に?いいよ!!何でもどーぞ』
質問なんて初めてじゃん!いやぁ、何か、レオ君との距離が縮まった感じがするよ〜うん。
「何故名前様は此処にいるんですか?」
『誘拐されたからだよー』
「え?」
おうおう何か吃驚してる。そりゃそうだね、こんなに呑気に生活しているんだから。
まぁ、それなりに楽しいし。
「此処から出たいとは思わないんですか」
『私、過去から来たんですよ。10年バズーカーとかいうやつで。だからどっちにしろ行く場所ないんです。それに此処で有意義に過ごせるし!
何とかして過去に戻れるまでここにいても別に良いんでふ。げふ』
もしゃもしゃ食べながらだけど別に気にしちゃーいけませんて。口から出そうになったけど。
ほら、レオ君もちゃんと聞いてくれてる!
「そ、そうなんですか。なら…《名前チャーン暇?あのね……おっレオ君もいたんだ》」
『あっ白蘭さん!今朝食食べてるので、後でそっち行きます!』
「《うん。分かったよ、じゃーねー♪》」
あれ、そういえばレオ君何か言いかけてた気がする…気になるなぁ。
聞いてみたけど、「いえっ別に!」とか言って出て行っちゃった。まあいいか、そうだ白蘭さんの所に行かないと。
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『白蘭さんー!来ましたよ〜』
「ん。そうだ、お菓子でも食べる?」
『え?(用事ってそれだけかな)あ、はい!食べたいです。』
「レオ君と何話してたの?」
相変わらずニコニコしてるけど何だろうこの威圧感。もしかしてダメだったのかなー
『いえ、とくに何もですよ〜。私がドジしちゃって。零しちゃったんですよ♪へへ…』
「へぇ〜。名前チャンがドジするなんて珍しいね♪」
パフェを口にしながらそういう白蘭さん。いやいや、私過去にいた時散々ドジって言われてたんだから!あ、自慢じゃないけどね…!
『…!
こんなにあるけど…食べきれない!!でも食べたいっというわけで白蘭さん!!部屋に少し持っていってもいいですか!!』
あきらかにキラキラとした瞳で言う私をしばらく見つめ、くすっと笑ってから「いいよ♪」と言ってくれた。よっしゃー!!これは夜食にしよう…
結局白蘭さんの用って本当にこれだけなのかっと心の中で思いつつ、沢山のお菓子を持って部屋を出て行こうとした。
あれだ。白蘭さんは暇だったんだよね!分かるわかる私も毎日暇だもん。
それに…白蘭さん仕事あまりしてなさそうだからな〜ぷぷッ
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「(何してるかと思って非常用監視カメラで見てみたら、まさかレオ君がいたとはね。しかも彼…深刻そうに話してたからつい回線繋いで邪魔しちゃったけど…
名前チャン、変な事言われてないといいけどね。彼最近何かと怪しいから――)」
(――ちゃんと見張っておかないと)