口移し
―――――
(熱い…。だるいし苦しい…。)
今は真っ暗だから夜中だろう。
『う…っはあ…はあ…ゲホッ…』
水がほしいが、だるさのあまり歩けそうにない。どうしよう
(朝がくるまで…待つしかないか…、そしたら…、白蘭さんとか誰かが来るかな)
『はぁ…ゴホッ』
どんどん熱が上がってきそうだ。
────コツコツ…コツ
(足音…?部屋に誰かいる…、誰…)
だんだん名前のいるベッドに近づいたと思えば、目の前にきてベッドの端に座り名前の顔の横あたりにギシッと音を立て、手をつく
───カタン
瓶か何かを置いた音がした時、名前の唇に柔らかい何かが触れる。
『……!?…ふ…っん…』
────ゴクッ
水と一緒に苦い液体が口に流された。
薬だろうか
(く…口移し!?)
余りに驚いてうっすらと目をあけると、どアップの白蘭さんがいた。
『びゃく…、…!?』
名前を呼びかけた瞬間
再度白蘭に唇を塞がれた。
『ひゃ…っ…ん』
(ぎゃああああああああ!!
ななななっんな!何これ?薬もう飲んだでしょ!?…なんでまたするの?
はああ!?)
名前の頭の中では、可愛さの欠片もない悲鳴が響いた。
そんな事考えていたら、途中息が苦しくなってきた。
覆い被さっている白蘭さんの胸板をドンドンと押しのけるが、無駄な抵抗で───
名前の意識は途切れた。