『灰かぶり』 p2/p10


お伽話でも致しましょう、お嬢様――これは悪意ある物語。
ただしこの全てが虚構であるとは限らぬので。



昔、あるところに父と意地悪な継母と義姉と暮らしていた美しい娘がいました。その国の王子様はある時、花嫁を探すために舞踏会を開きました。娘は魔法使いの協力で舞踏会へ行き、王子様に見初められました。しかし、魔法使いの魔法は12時で解けてしまうのです。
彼女は帰ってしまったのですが、王子様は残された手がかりから娘を見つけだしました。

…おやおや、それなら結末など解っているとでも仰せになるおつもりで? えぇ、確かにお嬢様がご存知の物なら、後は王子様が娘を見つけ出してハッピーエンド――というものですね。
ですがお嬢様、この物語にはガラスの靴は登場しておりませんよ。最後までお聞きくださいませ。

王子様は娘をそのまま連れ帰りはせず、娘を一旦家に送り返しました。明日、白馬に乗って迎えに来るから待っていて、と言い残し。王子様は家来と騎士を、明日には王妃になる娘の護衛にと娘にお供させたのです。
明くる日、王子様は娘を迎えに行きました。しかし、王子様が家の戸を叩いても返事がありません。王子様が扉を開けると、家の中には継母と姉に家来と騎士までもが死んでいました。

王子様は娘の姿を求めて家中を探しました。どの部屋にも、娘の姿はありませんでした。ただ一部屋だけ、鍵が掛かって開けられぬものはあったのですが。


―――さて、娘はどのようにして、何故消えてしまったのでしょうか?
ただし一切の魔法、魔術の類は存在せぬとしてお考えくださいませ。




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