『人魚姫』 p2/p7


ある青く綺麗な海の底には、人魚の王国がありました。波に紛れて人間を見るのが趣味である末の妹の人魚姫は、ある嵐の夜の日、船上パーティー中に船の外に放り出されてしまった王子を助けます。人魚姫は陸まで王子を運びますが、王子の隣国の姫が来たので隠れてしまいました。目覚めた王子は隣国の姫を見て「貴方が助けてくれたのか」と言います。人魚姫は「違う、あなたを助けたのは私なのに!」と思いますが人魚の身では姿を現せません。

人魚姫は王子に会いたくて、深海に住む魔女に「人間になりたい」と相談すると、魔女は「お前の美しい声をくれたら人間になれる薬をやろう」と言いました。人魚姫は声と交換にもらった薬を飲むと、気絶してしまい、気が付いたら陸に打ち上げられていました。すると王子がこれを見つけ、どうしたのかと問いかけられましたが、人魚姫は声が出せません。

王子は人魚姫を城に連れていって妹のように可愛がりました。薬のせいで歩くたびに足が針で刺されたように痛みましたが、人魚姫はそれよりも王子と一緒にいられることが嬉しくて、足の痛いのは顔に出さないようにしました。声のでない人魚姫が王子の命の恩人であることを告げられないまま毎日を過ごしていると、ある日隣国の姫と王子と結婚することを知りました。人魚姫はとても悲しみ嫉妬しましたが、声が出ないので伝わりません。

結婚式の船上パーティーに参加した人魚姫は、波間から6人のお姉さんが顔を出しているのを見つけます。一様に髪の短くなった6人は「王子が貴方以外の人と結婚してしまうと、貴方は死んでしまうのよ」「私達の髪と引き替えに、おばあさんにこの短剣をもらってきたの」と言って剣を船へ投げ入れます。「それで王子の心臓を刺して殺しなさい。そうすれば貴方は人魚に戻れる」と言われ、人魚姫はその短剣を持って王子の寝室へおそるおそる入っていきました。

人魚姫は震えながら剣を構え、王子様の胸の上に立て、素早く王子を刺し殺しました。そして、自分から王子を奪った隣国の姫も一突きで殺してしまいます。とはいえ、寝室から出た人魚姫は大きな罪悪感に苛まれます。剣を捨て船から身を投げました。しかし海に入った人魚姫は人魚には戻れず、天に昇っていくことすら出来ませんでした。ただ、泡となって消えてしまっただけ。



―――はてさて、姉の言い付け通りに王子を刺した人魚姫は何故泡になってしまったのでしょうね?


20120112


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