『灰かぶり』 p9/p10


家来たちは門に1人、家の窓のすぐ側に1人立ちました。家に入ることはしません。だから、4人は家の中で最後となる4人での時間を過ごしていました。重い空気の中、金髪の騎士が黒髪の騎士へ、
「なぁ、どうしてあそこまで王子殿下に逆らう必要があったんだ?」
と問い掛けました。
「確かに私はこの人が好きだけど、王子様とかの命令なら仕方ないじゃないの。死刑にされるかもしれなかったのよ」
と継子も言いました。継母までそれに同調します。
「だが、あの王子殿下は明らかに貴女たちを物扱いするはずだ!そんな暴君の所に愛しい彼女をやるなどできない!」
「大体、愛し合う者を引き裂くなどありえないわ!」
黒髪の騎士と娘は断固とした口調で言い返しました。
「位や金まで賜れる機会だと言うのにか!?」
「そんなものがあっても、彼女への気持ちは薄れない、何の慰めにもならない!」
男2人が最も熱くなり、とうとう、黒髪の騎士が一刀の元に金髪の騎士の首をはねてしまいます。それが皮切りでした。そして、騎士は恋人の死体に縋って泣く継子をも斬り殺します。実の娘を殺された継母が、鬼のような形相で娘を絞め殺そうとしました。そこに、一刀。
「…行こう。あの暴君の手が届かない、遠く場所に」
「えぇ。そうしましょう」
騎士が差し出した手を娘は躊躇なく取りました。玄関の扉を開けると、幸運にも家来はぐっすり夢の中。その2人も斬り捨てると、騎士は娘の手をしっかり握って、夜闇の中を駆けていきました。彼らの行方を知る人間は、いませんでした。




―――愛しい姫君が誰かに奪われてしまうのならば。私には、既にその覚悟はできています。
貴女の手を引いて、何処までも逃げていく覚悟は。他の何もかもを振り捨てて、ただ貴女だけの為に全てを賭ける覚悟は。…これに気付いて、でもそれには気付かないでくださいませ。

どちらにしても私は、何時でも此処におります、My Dear Princess―――


20111205

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