上手な獲物の捕らえ方
ぼんやりしていると、うっかり眠ってしまいそうなくらい穏やかな午後。
頬杖をつき、オズは窓の外を見ていた。
その瞳はどこか真剣で、何かを企む子どもらしさも含んでいた。
「どうしよっかな……」
コロリと口の中の飴玉を動かす。
苺の香りに頬が緩んだ。
先ほどからじっと眺める窓の外。
花の手入れをしているアンジェを見ているのだ。
虫が出る度に叫び声を上げる彼女は、庭師の仕事には向いていないと思う。
それでも一生懸命なところは、好きだな……なんて考える。
ぼんやりと頭の中を流れて行く様々な映像。
飴がなくなった時、ようやくオズは立ち上がった。
***
「アンジェ」
「あ、オズ様」
白いジョウロを足元へ。
アンジェは微笑みを浮かべてオズを迎えた。
「綺麗だね」
「ええ。もうすぐ、もっと素敵な花畑になりますよ」
「花じゃなくて、君だよ」
「……あ、えと……ありがとうございます?」
何を言われたのか、よくわからないと首を傾げるアンジェ。
言われ慣れていないだけだろう。
「ちょっと付き合ってもらいたいんだけど」
「はい。あ……少し後でもよろしいですか? ブレイ――」
「アンジェ」
何だか嫌な名前を聞いた。
忘れようとアンジェを呼んだ。
感情を殺そうとした声に、アンジェはビクリと肩を震わせた。
「えと……。オズ様?」
「アンジェ」
「はい」
「今すぐオレに付き合って」
有無を言わさない声音に、アンジェは小さく頷いた。
「……あの、オズ様?」
先ほどとは場所も空気も変えて。
アンジェはよくわからないとまた首を傾げる。
「オレさー、アンジェのコト好きなんだよね」
「ありがとうございます」
「それは、イエスって意味だよね?」
「あ、えと、その……」
わずかに目を細め、オロオロと落ち着かないアンジェを見つめる。
オズがどういう意味でそれを言ったのか、自分が発した言葉が何を意味するのか。
理解出来たようで顔を赤くしたり、泣きそうになったり、忙しなく表情を変えた。
助け船を求める相手を根本的に間違っている。
オズは自分でも怪しいと思えるほどの笑みを作った。
「初デートは、どこに行く?」
「あの、オズ様。私は……」
「出来れば、ていうか絶対、今後一切ブレイクとは会わないでね」
「あ、あの……」
まともな文章が口に出来ないアンジェの前で、オズは楽しげに今後の予定を並べた。
up 2009/10/25
移動 2016/01/22
← →
←top