ネタ vol.2013 | ナノ

◎今世デビュー

 私はいつも、人から外れてしまう。意図しないにも関わらず、合成獣になったり人造人間になってしまう。どうして外れてしまうのだろうか、ただ私は普通に生活していただけなのに。

 ――もう、間違えない。

 3度目、あの人と話して、私は固く決意した。

「なァ、隣いいか?」
「うん、いいよ」

 軍人口調も封印して、気配も殺さない。足音だって立てるし、女の子たちの恋バナだって、嫌な顔一つしないで聞いている。私はもう間違えないと決めたから。
 普通の人間になりたかった。普通に家族で仲良くして、友達ともたくさん遊んで、そのうち好きな人なんかも出来たりして、そういう日常が、喉から手が出るほど欲しくてたまらなかった。

「ねえ、名前は好きな人いないの?」
「私? ええ、いないよ」
「サスケ君は!?」
「格好良いとは思うけど、中身を知らないから分からないな」
「‥アンタ、やけに大人びてるわね」
「そうかな? いのちゃんも大人っぽいよ」

 山中いのは私のクラスメートであり、クラスの女ボスのような存在である。格好良くて美人で頼りになるいのちゃん。とてもよく出来た子で、私とは正反対だと思う。いのちゃんを見本にして生きている私には、少し眩しい。

 好きな人はいなかった。
 合成獣にされたときは王と呼ばれた方に仕えて病で死んだし、人造人間にされたときはお父様を裏切ったからお父様によって殺された。どこで恋をしろと言うのだ、と私は考える。
 そして、それはこの世界でも同じ。忍者、なんて死と隣り合わせな仕事で私はどうやって恋をすればいい? 夢を見るのは案外難しい。

「おい、邪魔だ。どけ」
「キャッ、サスケ君!」
「‥さっさとどけ」

 いのちゃんが目をハートにして道を空けているのを見て、恋とは盲目なのだなと痛感する。通り過ぎるときにサスケ君と目が合ったような気がしたが、気のせいだろう。
 だって、私とサスケ君は何も関わりがないし、私が関わったのは彼ではなく彼の兄なのだから。

「クールなとこも素敵よね!」
「‥私は自分に優しくしてくれる人が良いなあ」


20140630


mae tsugi

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