◎演劇部のお迎えパートツー
鹿島遊は、学園の王子と呼ばれている。その由縁は恥ずかしくて私からは説明したくないのだが、まあ、でも、自慢の友達だと思っている。
「遊、迎えに来たよ」
「ああ、今日は堀ちゃん先輩じゃないんだね」
「私は練習にあまり参加出来てないからお迎えくらいはしないとね。というわけで、行くよ遊」
「じゃあ今日のデートは‥?」
「泣かないで、お姫様。必ず抜け出して迎えに――」
女の子との約束を守らせてしまったらきりがないし、サボらせてしまったら堀ちゃん先輩に申し訳ない。私はただでさえ迷惑をかけている身だから、せめて何かしらで役に立ちたい。
「――遊、私と練習するのがそんなに嫌なの‥?」
袖をぎゅっと掴んで俯く。不安そうに見えたなら上出来だ。
遊は案の定乗ってくれた。
「そんなことはないさ。君と練習をしている時間はまるで夢のようだよ」
「はい、夢の世界に一名ご招待だね」
「えっ、ちょ、待っ」
「終わったらパンケーキでも食べに行こうよ。頑張った後のご褒美は美味しいに違いない」
「‥名前が言うなら」
「愛してるぜ、遊」
にこりと笑って手を引くと、遊はへらりと笑った。
20140815
mae tsugi
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