ネタ vol.2013 | ナノ

◎マミコの鞍替え

 名字名前は騒がない。
 御子柴実琴は、野崎に会いに教室に来たにも関わらず、名前を凝視していた。優しくて控えめな清純タイプの女の子が好きな御子柴のストライクだと思われたのが、名字名前だった。

「‥なあ、野崎」
「なんだ?」
「名字‥さん‥って、彼氏いるのかな」

 顔を真っ赤にしてそう質問する御子柴に、野崎は嫌な予感がした。名字は外面だけはいい。まさか、お前も騙されているのか。

「‥す、好きなのか‥?」
「はっ!?!?」

 ‥好きなんだな。
 可愛らしいほど分かり易い御子柴の態度が悲しかった。

 野崎のせつなげな視線に気づいたのか、御子柴はハッというような顔をした。そして、恐る恐る口を開く。

「まさか、野崎お前も‥?」
「それはない」
「びっくりさせんなよ!」
「俺もびっくりしたぞ。ちなみに名字に彼氏はいないはずだ」
「ほんとか? 良かったー」

「何が良かったの?」

 野崎と御子柴の会話に入ってきたのは、今ちょうど話題の人物である、名字だった。
 慌てる御子柴とは対照的にいつもの仏頂面の野崎を見て笑ったあと、名字は野崎に話しかけた。

「そういえば、お父さんから水族館のチケットもらったんだけど、私行く人いないから野崎くんもらってくれる?」
「水族館か‥、資料になるな。俺と行くか?」
「えっ」
「じゃあ佐倉さんも呼ぼうよ」
「そうだな」
「ちょっ」
「あ、御子柴くん‥だよね? 君も来る?」
「はい! よろこんで!」

 目の前で省かれるかと思った涙目の御子柴には名字が天使に見えたという。


20140724


mae tsugi

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