◎天使が笑った
「桂が出た。今すぐ橋へ向かうぞ!」
「桂‥。はい、了解です」
土方の後ろを走る名前がいつもとは少し様子が違ったので気になったが、土方は今はそれより桂だと頭を振った。
橋へ着くと、沖田が桂にバズーカを撃ち込んでいるところだった。土方は橋の修繕費のことを考えて頭を抱えている。名前は桂を一目見ると少し目を見開き、そしてさりげなくその場を離れた。
バズーカを食らった桂はその煙に乗じてどこかへ逃げてしまったようで、隊士たちが散り散りになって探している。
名前は手慣れた様子でとある屋根の上へ上り、そこにいる人物を見つけると、いつもの無表情からは想像の出来ないほどやわらかく笑った。
「こんにちは、小太郎さん」
小太郎と呼ばれた人物は、先ほどまで真選組に追われていた桂その人であり、近づいてきた人物が名前だとわかると途端に笑顔になった。
「名前ではないか!」
突然連れられたため、名前の格好は普段着であった。真選組の隊服ではないため、今名前が真選組にいるということは桂にはわからなかったのだ。
「名前も歌舞伎町にいたのか。今は何をしている?」
「‥真選組に、」
自ら言った。他人の口から知られるよりも自分の口から知らせた方がいいと感じたからだ。
それを聞くと、桂は少し驚くと、やさしく笑った。
「そうか。敵になってしまったのは残念だが、名前が元気そうで良かった。名前は放っておくと何も食べないからな」
「最近は必要最低限のものは食べるようになりましたよ」
「医者の不養生とはこのことだな。そんなに痩せていては体が保たんだろう」
「はは、大丈夫です。小太郎さんは相変わらずお母さんみたいですね」
「お母さんじゃない、桂だ」
20140401
かまっこ倶楽部ではお互い気づいてなかった模様
mae tsugi
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