◎天使は肯定する
僕には夢がない。希望がない。かといって絶望もない。欲もない。意志もない。
だから 僕は 従属 人間。
「くくっ、てめー、相変わらずだなァ」
背後から聞こえた声に、僕は肩を震わせた。この声は嫌な声だ。
「何の用ですか? ――高杉さん」
「てめーが真選組に入ったと聞いてな。うまくやってるか見に来たんだ」
「そうですか。僕はもう高杉さんとは敵です」
「てめーに俺は殺せねえよ」
そうですね。そうです。肯定しとけば痛くないものだ。
服従のポーズで相手に身を委ねれば、僕は自分の足で立たなくても済む。
「だって、てめーには俺を殺す理由はないもんなァ。正義なんて大層なモン、てめーにはねーよ」
「それが、どうしました? 正義がなくても僕はこの隊服を着ている限り正義を名乗ります」
「そーかィ。がらんどうな正義なこった」
喉の奥で笑うその人の、ひどく暴力的なカリスマ性は、一体何人の心を奪い、折っていったのだろうか。
僕にはよくわからないみたい。
20140323
mae tsugi
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