◎天使が心配された
名前はただいまカマっ娘クラブというところにいた。――理由は簡単。西郷ママに見初められたからである。
いつものように見回りをしていると、突然現れた西郷ママに連れ去られたというわけだ。逃げる暇もなかった。
「あらあ、カワイイ!」
「ほんとぉ!」
「‥あの、」
「あのじゃない、ヅラ子だ」
「アタシは」
「こっちはアゴ美でぇ、アタシがパー子でぇす。‥‥‥あれ、おめーもしかして真選組の」
「副長補佐の名前です。‥あの、ここは‥?」
何もわからずにされるがままだった名前には今の状況がまったく読めていなかった。
それを察したパー子は大げさにため息を吐くと、「ちょっとこの子借りるわよぉ!」と叫んで裏へと誘導した。
「なんでお前がここにいるかは知らねーが、ここはバケモノの巣窟だ」
「‥?」
「とりあえず来たからには野郎共に酒をつがなきゃなんねー。俺がヘルプに入るから、お前はとにかく粗相のないようにしろ」
「はい、わかりました。お手間をおかけさせてしまいごめんなさい、助かりました」
相変わらず無表情の名前に、パー子は面食らっていた。いきなりこんなところへ連れてこられても、その目が見開かれることはないし、その唇が大きく開かれることもない。
名前はパー子に言われたことを理解すると、再び表へ戻った。
「‥大丈夫かなあの子。超心配なんだけど」
その後、名前は大人気を博し、西郷ママにえらく気に入られた。
201403222
mae tsugi
戻る