ネタ vol.2013 | ナノ

◎天使が語った

「おーおー、チンピラ警察24時もイメージアップ狙ってきたか」

「あいつらもうどうあがいてもチンピラネ」

「まあまあそんな据わった目しないで‥」


松平公が言ったイメージアップのために、まずはポスターを作った。名前を筆頭に真選組が並んでいる写真(局長は端っこに枠に囲われていて卒業写真の休んだ人のようになっている。)を使ってレイアウトをした小洒落たものになっている。
そしてそのポスターを世帯ごとに配って認知させたあとに、名前に初めての見回りをさせることによって、真選組がチンピラではなくなったと認識させることが目的である。


「にしてもこの名前って奴、人形みてーだなァ」

「ほんと、綺麗な顔立ちしてますよね。何で真選組に入ったんでしょう」

「むしろ脅されて入らされたんじゃね」


ポスターを見ながらぶつくさ言って歩いていると、万事屋一行は妙に人通りがいつもより多いことに気がついた。しかも、心なしか女性が多い。

野次馬精神が働いて周りをきょろきょろしていると、見慣れない水色が目に入った。名前だ。この時間はちょうど初めての見回りらしく、名前が気になった女性が押し掛けたというわけだ。


「きゃー! 名前くんかわいい!」

「こっち向いてえ!」

「死ね土方ァ!」

「おい誰だ今死ねっつったの!」


沖田の悪ふざけに反射的に乗ってしまった土方を、隣に歩いていた名前が見上げることで止めた。まじまじと覗き込まれて段々と恥ずかしくなってきた土方はついに顔を反らした。それをなぜか面白くなく思った沖田はポケットに手を突っ込んで空を見上げる。


「‥僕、挨拶して来ます」


歓声に耐えきれなくなったのか、名前は女性の近くへ駆けていった。止めるタイミングを逃した土方は諦め、沖田は「おかしな奴だな」と呟く。
挨拶をしてさらに沸き上がる歓声に慌てている名前を見て、土方と沖田はため息を吐いた。


「おら、見回りに戻るぞ」

「今度握手会でも開きますかィ」

「あっ、はい! では失礼しますね」


相変わらず無表情であったが、案外わかりやすいところもある名前を知り、沖田は無意識に優越感を持っていた。


「土方さん、沖田さん、ありがとうございました」

「土方に礼はいらないですぜ」

「助かりましたから、伝えることはしたいです。受け取ってもらえなくても、伝えられれば僕はそれでいいです」

「‥自己満足って言うんですぜ、そういうの」

「伝えられないまま死んでしまうよりよっぽどいいです。僕は後悔するのがたぶん怖いんです」


夕日に照らされる横顔は儚く、そして美しかった。



20140323

mae tsugi

戻る



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -