◎恋を泳ぐさかな
「バスケ、優勝目指して頑張ろう!」
「おー!」
わたしはバスケをすることになった。バスケをしている宮地先輩に憧れてこれにした。彼がこんなにも夢中になるものを、わたしも知ってみたかったのだ。
高尾くんがかっこよかったから、なんて、思っていないよ。
あんなやつ。
やっぱり気は重い。
なんで高尾くんはわたしにだけ意地悪なんだろう。
嫌われているのは確実だと思うけど、残念だが心当たりがない。まず、体育館での出会い以前に関わりがなかった。
「………」
高尾くんの貼り付けたような笑顔を思い出すと、また泣きたくなった。
ちょうどそのときだった。
味方の女の子が焦ったような声でわたしを呼んだ。
急いで振り返ろうとしたのだが、振り返る前にわたしの頭に重い衝撃がきて、わたしの意識はそこで途切れた。
▽▼▽
「…気がついたか?」
「………」
辺りを見渡して一秒、すぐに状況を把握したわたしはとりあえずベッドに寄り添っていた緑間くんにお礼を言うことにした。
それにしても、ああ。わたしが保健室に行ったくらいで心配してくれる人間など、いないか。
緑間くんは変わっているから、来てくれたのも気まぐれかなにかなのだろう。
でも、気まぐれだとしてもありがたい。
「あまり動かない方がいいのだよ」
「大丈夫、ありがとうね」
「そういえば、さっきまで宮地先輩が来ていたのだよ」
「…えっ?うそ?」
なんということでしょう。ていうか、え、ほんとに?
緑間くんの初ジョークがこれだったら眼鏡かち割るよ?
「名字のことを心配していたのだよ」
「………」
「な、なぜ泣いているのだよ!?」
「う、ごめん………宮地先輩がわたしなんかを心配してくれて嬉しかったの…。誰も、わたしのことなんか心配してくれないって思ってたから」
本当に嬉しかった。
不安だったから、なおさら。
「俺も、心配していたのだよ…」
「ほんとう?」
「なぜ俺が嘘を吐かなければならないのだよ」
むすっとした緑間くんがかわいくて、うれしくて、しあわせで。
「ありがとう、緑間くん」
もっと、彼らと歩み寄りたいと思いました。
20121003
mae tsugi
戻る