ネタ vol.2013 | ナノ

◎星に触れる

放課後、特にすることもないので掃除が終わると共に帰ろうと準備をしていたら、先生に呼び止められた。


「名字、いいところに」
「?なんですか、先生」
「来週の球技大会のことについてなんだが、緑間と高尾に何に出たいか聞いてきてくれ。あいつらはバスケ以外な」
「えええ、わたし今から帰宅するんですけど」
「あいつらすぐ部活行くから聞きそびれたんだよ。頼む」
「…んー、わかりました」


もしかしたら宮地先輩を見られるかもしれない、なんて思っていない。断じてそんなことはない。ラッキーとか思っていない。

…思ってるよ!
宮地先輩好きだもん!

鞄は重いので教室に置いておくと、わたしは体育館へと駆け出した。宮地先輩のバスケしてる姿を早く見たいだなんてそんな。
扉の前で息を整えて開けると、ちょうど高尾くんがドリブルしているところが目に入って、不覚にもかっこいいなと思ってしまった。


「お、名字じゃねーか。宮地なら今休憩中だぜ。あと一分くらいだな」
「あ、いや、用事があるのは高尾くんたちなんですが…」
「?呼んでくるか?」
「いえ、大丈夫ですっ」


ドリブルの音と靴の音が大きくて、わたしなんかの声ではとても届かないだろう。
でも、木村先輩の手を煩わせたくはなかった。


「高尾くんっ!」


届くとは思っていなかったのに、高尾くんはびくりと肩を揺らすと恐る恐るこちらを振り向き、わたしの姿を瞳に映すと目を丸くした。続いて緑間くんがこちらを向き、ぎょっとした。
…さすがにそれは傷つく。

高尾くんは機嫌がいいのか笑顔でわたしに手を振ってくれたのでわたしも振り返すと、部員の人と少し話したあとにこちらへかけてきてくれた。


「名字、どうしたの?」
「先生から用事を頼まれて…っていうか、うるさいのによく聞こえたね」
「そりゃ、名字だか……いやなんでもない」
「わたし?」
「なんでもないって。それより、先生なんて?」
「うん、球技大会出るやつ決めるんだって。自分の部活は出れないから、バスケ以外で決めてね」
「名字はなにやってほしい?」
「えっ?そうだなあ…バレーとか?」
「じゃ、バレーやる。ね、真ちゃん?」
「も、もちろんなのだよ…!」


どうやらお二人はバレーをやることが決まっていたらしい。だったらはやく言ってほしかった。そして緑間くんは顔を赤らめるのがデフォルトなのだろうか。まあ、元が白いから運動しただけで赤くなっちゃうのかな、知らないけど。


「じゃあ先生にそう言っておくね」
「あ、名字。良かったら部活見ていくか?宮地いるぞ」
「えっ!い、いいんですか?お邪魔になったり…」
「大丈夫だって、気にすんな。ステージとギャラリーどっちが良いか?」


木村先輩まじ優男…!
わたしはお言葉に甘えてギャラリーから練習を見ることにした。もちろん先生に頼まれた用事を果たしてから。

しかし。


「高尾くん、よく見てるなー」


緑間くんのシュートも宮地先輩のドリブルもすごいけど、高尾くんがパスを出す人が最適すぎてもはや簡単そうに見える。実際は難しいんだろうな。

そんなことを考えていたら、いつの間にか木村先輩が隣に来ていた。しかもどこか楽しげだ。


「名字は宮地を見てると思ったんだけどな」
「木村先輩…。わたしは頑張ってる人みんなを見ます、宮地先輩だけを見てる訳じゃありませんよ」
「悪い悪い。高尾の目はすこし特別なんだ」
「特別?」
「鷹の目って言って、あいつはコート全体を見渡すことができる」
「え、」


そんなすごい人だったのか、高尾くん。

全体を見渡すことができるのなら、図書館で出会った儚げな少年のことも一瞬で見つけてあげることができるのかな、とふと思った。



20120909


mae tsugi

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