◎ラプンツェル・ループ
今は授業中。みんな眠りに落ちた中、わたしは頑張って睡魔と戦っていた。今はギリギリわたしが劣勢だ。
目が半開きで先生を睨み付けているようにとられないだろうかと不安になっていると、隣からグシャグシャのルーズリーフが飛んできた。
中を見たら「間抜け面(笑)」と書かれていて、慌てて隣を見ると、高尾くんがニヤニヤと笑っていた。うわあああ半目見られてた!女子としてどうなのそれ。
授業が終わり、高尾くんが緑間くんにわたしの醜態を話している。
ふん、話したければ話せばいいじゃないの。わたしはなんともない。
「…名字、」
「?緑間くんどうしたの?」
「授業中眠くなるのは誰にでもあることなのだよ…!」
「…あ、ありがとう」
真っ赤な顔をしている緑間くんはフォローをしているつもりなのだろうか。まったくフォローになっていないよ緑間くん。むしろ君のフォローのせいで何故か高尾くんの機嫌が悪くなってるよ。
「そういえば、宮地先輩は真面目な人だよね。真ちゃん?」
「む、そうらしいな。成績はいつも上位だと聞いたのだよ」
…不自然な話題転換により、高尾くんの言いたいことはよくわかった。授業中に睡魔に負けているような奴は宮地先輩と釣り合わない、と。
そんなこと知ってるよ、最初から。高尾くんに言われなくてもわかってる。
少しわたしの表情が暗くなったのか、緑間くんが慌てだす。
すると、そこへ思いもかけない訪問者がやってきた。
「俺の成績がどうかしたのか?」
「宮地先輩っ!」
「おう、名字。こいつらと知り合いだったのか」
「大変遺憾でありますが、否定出来ません!」
「そこは普通に肯定してやれよ…」
呆れたように笑う宮地先輩も素敵だ。
「そうそう、俺はこいつらに用があったんだ。体育館の都合で今日は昼練無しだ」
「はいはーい」
「把握したのだよ」
「軽トラで轢くぞお前ら」
うん、二人とも先輩にとる態度じゃないよね。宮地先輩に苦労をかけさせるなんて何様だ。
「ところで、さっき俺の成績の話してたみたいだけど、名字、」
「そうそう、こいつ本当に馬鹿で!宮地先輩もなにか言ってくださいよー」
高尾くん貴様…!ヘラヘラとしていればなんでも許されると思ったら大間違いだぞ!あとで消しカス投げつけてやる!
冷笑されてはいないかと恐る恐る宮地先輩の方を向くと、先輩は優しい表情でわたしを見ていた。
え、なに、同情?
「俺でよかったら、わからないとこあったら教えるけど」
「えっ!いいんですか?」
願ってもないチャンスに、明日死ぬんじゃないかと思った。
「まあ、時間あるときだけでいいなら」
「ありがとうございます!」
高尾くんが「なん…だと……?」とでも言いそうな顔をしているが、なんなんだお前は。そんなにわたしのことが嫌いか。
「宮地先輩にそんなことさせるのは悪いっすよー」
「いーんだよ、気にすんな。じゃ、俺は教室戻るわ」
宮地先輩が帰ったあと、高尾くんに頭を叩かれた。理不尽だ。
20120902
mae tsugi
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