ネタ vol.2013 | ナノ

◎静寂を抱きしめる

「名前、部活終わるまで待ってろ」


相変わらず俺様な青峰くんに苦笑しながらも断れないわたしもわたしだろう。
青峰くんの幼なじみだというさつきちゃんにずいぶんと心配されてしまったけど、わたしに大して支障はない。

有って無いような毎日だったから。


「青峰くんはバスケ部だったよね」
「まあな」
「見てもいい?」
「…別に面白くもねーだろうけど」
「青峰くん、バスケうまいって有名らしいから、一回でも見ておこうかなって」
「…おー」


素っ気なく返された言葉とは裏腹の、嬉しそうな顔。
わたし、案外青峰くんのこと好きになれそうかもしれない。

体育館に着くとさつきちゃんが駆け寄ってきて、青峰くんが来たことを喜んでいた。
帰宅部であるわたしといつも一緒に帰っていたということは、ここしばらくずっと部活に出ていなかったということだ。さつきちゃんには悪いことをしたなと思う。思うだけ。


「じゃあ、名前はステージにでも座ってろ」
「うん、そうする」


ギャラリーだと少し遠すぎる。

青峰くんが部室に着替えに行くと、眼鏡をかけた人に話しかけられた。話を聞く限りでは、どうやら青峰くんの先輩らしい。


「青峰のバスケを見に来たん?」
「まあ」
「なんや、浮かない顔やな」
「わたし、計算高い人苦手なんです」
「…ほお?」


ニヤリと先輩が口角を上げた瞬間、先輩にバスケットボールが飛んできた。先輩はそれを難なくキャッチすると、楽しそうに、バスケットボールを投げた人物――青峰くんの方を向く。
青峰くん、着替えるの早いなあ。


「珍しく、えらいご執心やなあ?」
「言っとくけど、誰にもやんねーからな」


不敵に笑う口元。
ギラギラと光る好戦的な目。

もう、目が離せなかった。



20120830

mae tsugi

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