苦しいのかと、問う声がする。
苦しくないといえば嘘になる。
誰かと話しているのをみれば嫉妬するし、嫌な気分が心を支配しているのが分かる。
でもそんなこと言えないし、我慢してる。
男同士で、相手は友人なのにこんな感情持ってる方がおかしいとも知ってる。

「はーーあ、恋ってこんなに苦しいんスね、火神っち」
「いや知らねーよお前の恋愛沙汰なんてこれっぽっちも興味ねえよ」
「興味なくても聞いて欲しいんッスよ!」
「俺には関係ねえだろ」

ところが、関係大アリなのである。
自身が恋心を抱いている相手が問題だった。

「関係大アリッス!火神っちーーー!」
「うるせーよ黙れ」
「ひどいッスよ……だって黒子っちには相談出来ないし…もう火神っちしか頼れないッスよーー!」
「なんでだよ海常の奴らに相談すりゃいいだろ」

火神は知らない。
海常のスタメンがよほどもてないことを知らなかった。
スポーツをしていることは女子にとって好感度があがる、となるはずなのだが度を過ぎれば引かれてしまっても仕方ない。

「先輩たちは駄目ッス。まるで駄目ッス。」
「……あっそ。」
「ああもうどうしよう火神っち!考えると胸がいっぱいになってどうしようもならなくなっちゃうッスよー!ねえー!どうしようー!」
「だから知らねっつの…」
「どうしたら振り向いてくれるッスかね…バスケは駄目だし、俺の顔も通用しないんスよ…」

にわかに火神の顔が歪む。
なんだこいつナルシスト野郎かと、ありありと顔に書いてあることに黄瀬は気付かない。
むしろヒートアップしてぐだぐだと愚痴りはじめていた。

「全然オレになびいてくれないんスよ…優しかったのに、辛辣になっちゃってオレさみしいッス…1番仲良くしてたって思ってたのにそんなことないって言うし…。」
「…」
「オレだけすきすき言ってて馬鹿みたいッスよ…この前だってメールしたのに『明日も練習が早いのでおやすみなさい』って言ってすぐ返してくれなくなっちゃうし…会いにいけば何のようですか?って…」
「……」
「オレの方が火神っちより黒子っちのこと好きッスもん…なんでオレのこと嫌うんスか……ぐすっ…」

話を聞き流していた火神の眉がぴくりと反応する。

「おい、黄瀬。」
「なんスか…話聞いてくれる気になったッスか?」
「お前、その…なんだ、好きな奴って……」

「え、黒子っちッスよ?」

さらりと爆弾発言を落とす黄瀬。
その衝撃により、一名呆然。のち、苦笑。

「な、…あー…あぁー…ああ、わかった。」
「あれ?言ってなかったッスか?」
「一言も聞いてねえ」
「それは悪かったッス。オレが好きなのは黒子っちなんスよ……!」

なんといえばいいかわからない表情。
微妙な表情を浮かべて、のち、帰り支度をはじめる一名。

「まぁ、その、な…頑張れよ…。たぶん、全部聞かれてっから…。」
「ん…?どういうこ


一瞬にして顔から血の気が引いていくのがわかった。
帰り支度を終え、立ち上がった火神の後ろには黒子が、座っていたのである。
言い忘れていたが、話していた場所はちかくのファーストフード店。
黒子がいてもおかしくはないが、ないのだが。

「え、あ…く、くろこっち……」
「…黄瀬君。」
「えっ、あっ、えっと、その…あの……」

黄瀬の位置から黒子の表情は見えない。
怒っているのか、呆れているのか、気持ち悪い奴だと、軽蔑した表情を浮かべているのか…。

「あ、……の、ごめんッス…ごめんなさいっ…」

一気に脳内を嫌な妄想が駆け巡る。
黄瀬君、気持ち悪いです?
黄瀬君、もう顔も見たくありません?
黄瀬君、嫌いです?
どれもこれも聞きたくなかった。

だから、急いで荷物を引っつかんで立ち上がる。
なにもかもそのままに、急いで出入り口へと逃げた。
ばたばたと出て行く自分の姿を怪訝そうに見る店員に配る配慮もなく、走る。








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