48.5《048裏話》
フランとのことがあった昨日は、大人しく部屋にいたわたしこと珠紀。
さすがに自重という言葉を覚えたのだ。
昼間中には留まらず夕方、そして夜中まで、わたしやフランの行動について考えることにしたが、答えは出ないままだった。
その日の夕食は皆で食べることになっていたのだが、そこにはフランの姿があった。
よかったよかった。
食べないなんて言ったら迎えに…はちょっといけないから、ベルにでも行かせようと思ってたから。
フランはわたしと目が合うと、薄く笑って返した。
なんだか、あんなんがあって悩んでるのは実はわたしだけか?なんて思ったけど、そんなはずはない。
だって、目。
ちゃんと冷やさなかったんだろう。
真っ赤になって、少しまぶたが腫れていた。
それは、メガネなんてなくても分かることで。
スクアーロさんにパンツ見られたとか、痴態見られたとか、そんなこともあったけど、そんな問題は小さく思えた。
(いや、信用問題にも関わるレベルではあるけども。)
みんなも何かを悟ってか、普段通りのようで、どこかフランを気遣うようにしていたのが印象的だ。
ああ、そんなところでもヴァリアークオリティなのね、なんて。
わたしが第三者なら、気づくことも出来ないで、構わずおかず奪ってただろうな。
そんなこんなで、昨日一日が終わった。
で、今日になったわけだけど。
結果を言うとあまり寝れなかった。
あそこで抱きしめられて、それを許したわたしは、実は失敗だったのではないか。
わたしが泣いたってどうにもならないのだから、そうすることでフランを傷つけたんじゃないか。
他にも色々喋ったが、わたしの一言一言が、余計なものになっていたらどうしよう。
あの真っ赤な目を見てからは尚更、そんな考えに拍車がかかった。
せっかくわたしを好いてくれたというのに、わたしはそれを無下にして。
しかも無駄に傷つけていたなら、もう、わたしはクズだ。
フランに合わす顔もない。
あー……だめ、なんか吐きそう。
おぼつかない足取りで談話室へ向かうと、その途中でマーモンに会った。
なんか、昨日の夕食ぶりなのに懐かしいよマーモン…
「大丈夫かい?」
これが大丈夫に見えるなら、あんたは相当重症だよ。
そんなことを思いながら談話室に足を踏み入れると、ソファにはルッスーリアと満天の姿があった。
となりにはマーモンもいる。
ああ、どうしよっかな。
相談してみようかな。
でも、もしフランが、自分のそういうのを知られたくない人だったらどうしよう。
結果また傷つけるよ…
なんだかお先真っ暗、とか思っていたら、ルッスーリアが顔を明るくして駆け寄ってきた。
「珠紀ちゃんってば、今あなたの話をしてたのよ〜ん!
ほらっ、座って座って!!
マーモンちゃんも、逃げないでちょうだい!」
ごめん、今日そんな元気ない。
半ば無理やりソファに座らされたわたしとマーモン。
そこでルッスーリアが切り出したのは、案外予想外のことで。
「フランちゃん、動き出したんでしょ?
本人は気づかれまいとしてるけど…
あの落ち込みようからして、どんなことになったのかは想像つくわ。
でも、珠紀ちゃんも相当気に病んでるんじゃないかと思ってね…
今、満天ちゃんと話してたのよ。」
満天も静かに頷いた。
なに、このいい人たち。
わたしは思わず泣いた。
何かこの2、3日泣きすぎじゃね?
いや、歳かな。
下も緩くなったらどうしよう。
わたしは、今考えていることを正直に話した。
するとマーモンが途中撫でてくれたり、いつも刺々しい態度の満天も優しかった。
(満天…何か弱ってる人見ると優しくなる。気のせいか。)
なかでもルッスーリアは真剣に聞いてくれて、最後にはこう言った。
「最後に抱きしめていいかって聞いたのは、フランちゃんも覚悟の上だと思うの。
自分が悲しくなることも知っていて、最後にって…
でもね、珠紀ちゃん。
それでフランちゃんが悲しくなっても、別に珠紀ちゃんのせいじゃないのよ。
珠紀ちゃんは自分なりに、フランちゃんの気持ちに答えた。
だからもっと自身持って。
あの子はあの子なりに、立ち直り方も知ってるはずだもの。
強い子なんだから。
それに、皆もそうだけどね…
フランちゃんもきっと、あなたの笑顔が大好きだと思うの。」
うんうんと頷く満天。
マーモンは相変わらず撫でている。
ああ、もう。
わたしは、周りの人間に恵まれるな、なんて。
「ありがとう。」
泣いていたから、うまく伝わったかは分からない。
けど、ルッスーリアも笑ってくれたから、きっと伝わったんだと思う。
「わかったら、よし。
はい、じゃあ仕切り直しよん!
これ飲んで、落ち着いてちょうだい。」
そうして差し出されたマグカップに入っていたのが、ミロではなくココアだったことに、わたしはまた泣いた。
ここでその理由は、さすがに言えなかった
――――――
“点5”な話では、多分一番長いと思われる話。
ちなみにオチの点数は5点。
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