001「兄妹のおはなし」





「むふっふん」




嬉しいことがあると、ついついスキップをしたくなるものだ。




「ふふっふんふん」




まあ、しないけどね。

ついついしたくなるだけで。


そりゃあ、実家とかじゃするかもしれないけど、あいにくここはヴァリアーの城内だ。

僕は一応クール系シスコンキャラで通ってるから、流石にスキップなんてしたらおかしなことになる。


と、それはさておき。


さっきはあのうざったい銀髪のせいでゆっくり出来なかったからね。

もう部屋に戻って来てから30分も経ったし、そろそろ珠紀に会いに行こうかと思うわけだ。


これは思うだけではない。

よし、会いに行こうと言うことで、部屋を出て既に廊下を歩いている。


一度通った道だから、迷うことなく珠紀の部屋まで辿り着きそうだ。

流石僕だ。

珠紀と違って方向音痴じゃない。


まあ、言っちゃえば、そんな足りないところを補い合ってきた仲なんだけどね。


こんな恥知らずなことを考えるのも、僕の良いところであり悪いところ。

ほら、よく言うでしょ。

長所と短所は紙一重って。


と、そろそろだ。

あの角を曲がれば、珠紀の部屋が見えてくるはず。




「…よし。」




意を決して、ドアをノックする。

ここはあえて便所ノック。

なぜなら僕はユーモアに長けるからだ、ただし珠紀相手のときだけ。


すると案の定「どちらさま?」の一言も無く、ドアがあく。


この癖のせいで部屋に押しかけてくるやつがいるんだな。

まったく不用心だ。




「にぃ!

…え、早くね?
まだ出てってから30分と経ってないんだけど。」


「そろそろ30分だからね。

おじゃまするよ。」





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