40.5《040裏話》
(※雲雀恭弥視点)
珠紀と大事な話をしてから、早三日が経とうとしている。
僕がここ、イタリアにいられるのは、残すこと二日となった。
ヴァリアーにいて特に何をするわけではないけど。
今回の目的はただ一つ、珠紀を連れて帰ることだし。
(まあ、本人の意思も確認したい&XANXUSの許可を得なきゃいけないから、留まってるわけだけど…)
ただ、流石の僕も暇にはなるわけで。
外に出て、路地裏や港あたりで悪党狩りをしてくる訳にもいかないし。
なによりそんな事をしたら、気分が昂ってあのスクアーロとか言う奴を咬み殺したくなっちゃいそうで大変だしね。
必然的に、僕の行動は3つくらいに限られてくる。
一つ目は珠紀の部屋に行くこと。
喋ったり色々して、懐かしの時を味わえるからね。
可愛い妹との一時。
お茶タイムにお昼寝タイム。
昨日は思わず童心に帰るかと思った。
二つ目は無難に読書。
こう見えて、僕は読書家だから。
漫画の活字ですら読み飛ばす、読書アレルギーの珠紀とは違ってね。
(でも、ジャンプだけは読んでるんだよね。
未だに僕が買って、読んだら5冊くらいまとめてイタリアに送ってるし。)
そして三つ目は、散歩。
これは、珠紀に「いい加減うざい一人にさせて」と言われた時の行動になってくる。
実際、大半の暇潰しはこれだったりする。
おかげでヴァリアーの城内の地理は完璧だよ。
まあ、そんなわけで、今も散歩に出てるわけだけど。
「――…」
「―――…―…」
なんか、珠紀の部屋の中、大変なことになってるね。
そして、聞く気もなかったけど、僕はこの時聞いてしまった。
「わたしは、ヴァリアーに残りたいと思っています。」
きっと、中に一緒にいるのは、スクアーロとかいうあのふざけた長髪だろう。
なんだい、珠紀。
お兄ちゃんに相談する前に、あの男に相談かい?
よほど信頼できるのかな。
なんて。
僕の足は、自然と割り当てられた部屋へと向かっていた。
いや。
別に、分かっていたことだ。
珠紀が「残る」と言うことくらい。
他の連中が珠紀を帰さないことくらい。
僕のこの行動が、無意味に終わることくらい。
一気にベッドに倒れ込むと、柔らかい布団に体が沈む。
そしてほうと一息つき、高い天井を、手で仰いだ。
「…まだ、あいつを許せないでいるんだな、僕は。」
僕は、あいつが憎い。
珠紀の心に消えることのない傷を作り、永遠に引き止める枷を付けたあいつが。
だから、僕があいつという枷を隠してやるんだ。
珠紀が枷に後ろ髪を引かれないように。
前を、上を向いて歩けるように。
でも、それももういらなかったみたいで。
珠紀は、もうとっくの昔に前を、上を向いている。
僕の助けなんてなくたって、とっくに歩けるんだ。
でも、それでも僕は…
「君を、守りたいんだよ。
…珠紀。」
―――――
みじかい。。
あ別に近親相○フラグとかじゃないです。
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