002「頼まれ事」







「雲のウ゛ァリアーリングを、至急作らせろ」





前回のあらすじを説明しよう。


え?ドラゴ○ボールみたいに前半があらすじで終わっちゃったりしないかって?




大丈夫だ、問題ない。




ちなみにこれは、たぶんこの世で最強の死亡フラグと思われる、一種の魔の呪文だ。


読者にエル●ャダイのネタ分かる人いんのかな。


冒頭からパクりまくりでよく分からない路線に走っているわけだが、前回もこのような感じだった。




(暗殺の)仕事を終え、疲れて帰ってきた青年スクアーロ。

彼の唯一の安らぎの場所である自室だが、その日だけは何かいつもとは違った。



いや、決定的に違うものがあるのだ。



部屋に入った瞬間に理解できた。




入口より3mほど離れたあたりに、口にでかいフグを突っ込み、裸の状態で、海鮮物を身に纏いながら、大量の大根を抱えて、数枚並べたまな板を下敷きに昼寝しながら、魚の尾ビレのように足をばたつかせている女がいたのだ。




言葉を失ったスクアーロ。


仕事仲間のルッスーリアに助けを求め、再度部屋を確認しにきた。

だが、その頃には、口にでかいフグを突っ込み、裸の状態で、海鮮物を身に纏いn(略)はいなくなっていた。


不思議に思っていたその時、ウ゛ァリアーの若きボスであるXANXUSからお呼びだしを喰らった。



3分以内という短い時間でボスのもとへたどり着くと、着いて早々、彼はボスにこう言われた。





「雲のウ゛ァリアーリングを、至急作らせろ」












「………はあ?」


「雲のウ゛ァリアーリンg「それはもう聞いたからいい!」なら、ほかになにが聞きてえんだ」




何もないだろ。

有無を言わせない鋭い瞳。


何年か前なら、こんなXANXUSにものを言うのも怯んでいたが、いまのスクアーロはそんなことはない。




「それはつまりどういうことなんだあ」


「そのままの意味だ」


「…幹部が増えんのかあ?」




そのまま捉えたら、そういう意味になるだろう。


雲の波動の流れているやつが、ウ゛ァリアーの幹部になる。

そういうこと。




「ああ」




スクアーロの想像は当たっていた。




「入れ」




XANXUSが短く言い放つと、部屋にひとりの女が入ってきた。


足音はあまり立てずに歩き、口は一文字に結んでいる。

黒く綺麗な髪と澄んだ目からは、大人しくクールな印象を得た。


ジャッポーネの女らしい。




「そこのカスに何か言ってやれ」




XANXUSが言うと、女はスクアーロの方を向き、軽く頭を下げた。


改めて合った視線。


黒いまつげに縁取られた、黒く大きな瞳。



飲まれそうだ、と、スクアーロは少し唾を飲んだ。




「珠紀です」


「そいつがテメェの教育係だ。死ぬほど面倒かけてやれ」


「はい」


「う゛おぉい!なんだそれはぁ!
…あ?教育係だぁ?」


「おせぇよ」




XANXUSの無茶苦茶すぎる発言の嵐にツッコミを入れるが、これは本当に困った。



なんだ教育係って。




「そのままの意味だ」




そいつに幹部の仕事を教えてやれ。
…覚えは悪いがな。


XANXUSはそう言った。



スクアーロに任された仕事をまとめるとこうだ。





◇珠紀にウ゛ァリアー幹部としての仕事を教える


◇他の幹部にもこの件を、綿密に、的確に伝える


◇任務を行う際は、幹部1人が同行で実践させる


◇剣の稽古をつけてやる


◇三ヶ月の間、24時間珠紀を監視する





この5つだった。


なんだか見方を変えれば「どこぞのギャルゲ?」というようなシチュエーションだが、監視は仕方のないことだろう。

いくらXANXUSからの信頼があっても、他の幹部や部下達からの信頼は築かれていないのだから。


XANXUSは、珠紀に目で合図をした。

が、それを理解してもらえるはずもなく、結局口頭で「行け」と言った。


珠紀は頷いて、笑顔を作りスクアーロの元へ来る。



「これから、よろしくお願いしますね!」


「…あ、ああ」



いざ口を開けば、わりと明るいものだった。

見た目はこんなにもおとなしそうなのだが…。



と、部屋から出ようと珠紀と並ぶと、なんだか嗅いだことのあるような匂いがした。


いや、匂いといえば字面はいいが、厳密に言えば臭いだ。

そっちのニオイの表現の方が合っている。


…何臭いんだ?

これは、何臭いんだ?



かつて聞いた、女の子はみんないい香りがするってのは、都市伝説だったのだろうか−−−…




「ああ、待てカス」


「はい」



カスで返事しちゃうのか。



「そっちのカスだ、カス鮫」


「ああ!?」


「ひとつ注意だ」



クツクツと喉で笑いを交えながら、XANXUSが言った。


注意、だと?

行けと言ったのはお前だろ、というツッコミも入れたかったが、多分かっ消されて終わりなので口は閉じておく。




「そいつ、まず風呂に入れてやれよ。それからだ。」




XANXUSは、そう言った。


なんだ?臭いからか。

まあ、こう見えて謙虚な性格をしている俺には言いづらかったことだ。

少し助かったな。
と思っていると、珠紀は少し顔を赤くしながら言った。




「ボス、私は好きで盛り合わせになったんじゃないですよ!」







「…あ?」




いま、なんて?





「知ってるから言ったんだろ、カスが。どうせ風呂に入りたいなんて言い出せないだろ」


「まあ、そうですけど…ありがとうございます」


「ハッ!…わかったら行け」




半ば強制的にXANXUSの部屋から追い出された2人。

黙っていてもどうしようもないので、とりあえず赤絨毯の長い廊下を歩きはじめる。


相変わらず女は臭い。



「あのう」


「…あ?」


「すいません、私、臭いですよね。ごめんなさい。
お風呂に入る時間が無くて…ごめんなさい。」



足を止め、へこりと軽く頭を下げながら言った。

なんだか少し照れているようだ。


…なんだぁ、こうしてりゃ可愛いじゃねえかぁ。



「別に気にならねえがなぁ」


「ほんとですか?ああ、よかったです…」



ほっと胸を撫で下ろしたときと珠紀は、柔らかい笑みを浮かべていて、なんだか可愛い。

うっかり惚れねえようにしねえと、なんてスクアーロが考えていると、今度は無邪気な笑顔を浮かべて、スクアーロに言った。



「外国の人は生魚をあまり食べないと聞いたので…

生臭さに慣れてないと思っていたので、安心しました。」



ニコッ

普通の状況なら、『よく気がきく女なんだな』で済むような状況だろう。

そして『可愛い笑顔だ』と惚れてしまうような…


ああ、普通の状況ならな。


だがあいにく、今のこの状況は、口が腐っても「普通」だなんて言えない。

いや、口どころか、この状況自体が腐っている気がする。



「…生魚、だとぉ?」


「あ、はい。私、今回ここに来たとき、着るものが無くてお魚さんたちに紛れてきたので」



お魚さんたちに紛れるってどんなだよ。

紛れれるもんなのか。


スクアーロは、思わず足を止めて言った。



「どういうことだぁ?」



「実は、前のボスが

『今回の就職先までは船だよ!旅行みたいでいいでしょ?』

って笑顔で言ってきたんです。


とまあ私が喜んでたら、船って、漁船のことだったみたいで。


汗と涙を流しながら、やっとこさついたころには服がなくなってて。


漁師さんたちが、

『嬢ちゃん若いのにご苦労なこって。これをもってけ。』

って、たくさん魚をくれたんです。

生きてました。

そんなこんなで私は、仕方なく生魚を…」


「ちょっと待ておかしい!なにかがおかしいだろぉ!!それ!」



へ?とぱちくりしながらこちらを見てくる珠紀。

全く。へじゃない。



「着替えはなかったのかあ」


「ないですね」


「…荷物は」


「クール便で送られてきてるはずです」



なんでクール便だよ。



「……はあ」



なんだか、この女がどんなやつか大体わかった気がした。




第一印象は「残念」で決定。




とりあえず、この残念な女を風呂にいれさせることにしよう。







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