035「ナツバテ?」





ミーーンミンミンミンミンミ…




「あぢぃ〜…」




どうも。
暗殺部隊ヴァリアー雲の守護者(仮)やってます。

雲雀珠紀です。



いきなりですが、暑いですね。

夏ですよ?

暑いですね。


今回は、例え読んでる人がいる所が寒くても、読んでる季節が冬でも、私は夏を貫きます。


貫きたくないけど。

だって暑いもん。



どれくらい暑いかっていうと、

「ああ、茶碗蒸しってこんな気分なんだなあ…」

ってなるくらい暑い。



黙ってても汗が出る。

流れる、なんて生ぬるい表現じゃ表せやしない。


吹き出る。

これが適切な表現。




「珠紀ー」

「あ、ベル…どったの…」


「え。なに。

テンションひっく。」




だって暑いんだもん。


しかもあれでしょ?

日本の震災から時間が経った今でも、“節電”のモットーは変わらないんでしょ?


知ってるよ。

例えばスーパーだと、クーラー6割削減とかほざき始めて、あれすんだよ。

食品腐らせんだよ。

知ってんだよ。


クーラーとか電気食うから、やっぱり控えなきゃいけないって。


わたし自身ホラ、テレビ見ないし寝るの早いし、その辺は心配ないけどさ。

冷房だけは抜かせないんだよ。


これが問題。




「ちょっ、珠紀さーん、扇風機の前に行かないでくださいよー

ミー、さっきから全く風来てないんですよー?」


「うるせーじゃあ首回せ。」


「回してもアンタが追いかけるから意味がないんですよー」




そう。

扇風機じゃ足りない。


いや、まだ扇風機があるだけ良いんだけどね?

むしろ雲雀家にはクーラーなんてないから、万年扇風機だったけどね?


そこにクーラーがあるのに、使うのが扇風機ってのが分からない!


いやいや節電もわかるよ?

しなきゃいけないよ?


でもわたしらが熱中症になって困るのはボスより上の沢田綱吉(前のボス)だからね?

働き手がいてこそのヘッドだからね。


いいのか、ヴァリアーが倒れても!

くそっ!




「今度帰ったら覚えてろ綱吉…」




まあ、今度 がいつになるのかは、皆目検討もつかないけど。




「何だよ、そんな暑い?」



ベルが言う。

なんかイラッときた。




「決まってんだろ。


冬は着込めば電気も使わなくていいけど、夏は違うだろ。

扇ぐにも結局手を動かしてるわけだから、熱を産み出してんだよ。


意味無いんだよ。

じっと耐えるしか無いんだよ。」



「いや、じっとしてたら普通じゃね?別に。」




さらっと言ってのけるベルに、さりげなーくまた苛つく。


ホントだよコイツ。
口だけじゃない。

マジで汗一つかいてないよ。
当に“涼しい顔”って感じだよ。

なんだよ腹立つなオイ。



どうせあれだよ?


「なんで汗かいてないの」

って聞いても、

「だってオレ王子だもん」

とか言うんだよ、コイツはよ。


意味わかんねーよ。


なんかガチの王子とか言ってたけど、ホントなのかな。

いや、無いか。

今時王子とかいねーよ。




「てかさあ、なんでヴァリアーで節電なの?本部やってんの?」


「それがですねー珠紀さーん。

残念ながら、ヴァリアーでは毎年この時期、電力8割削減を目指してるんですよー。」


「はっ?」



「ミーもヴァリアーに入りたてホヤホヤな時は、そりゃびっくりしましたよー」


「……はあ!!?」




フランが「うるさい」とでも言うように、耳に指を突っ込む。

相変わらず嫌味だなあ…。

まあいいけど。


てか。

ていうか!!


何?
8割削減て。

他の季節にやらずに、なんでこの時期オンリーで8割も削減しなきゃいけないの!

やるなら四季で分散して、年中オール2割削減を目指せばいいじゃん!

なんかやる気起きないんだけど。


確かに秋冬あたりは使うよ?
ガソリンだとかそういうの。

ヒーターも当たり前に焚くし。


でもさ、もっとやり方あるんじゃないの?




「仕方ないんですよー。

まあ、ホラ。

郷に入っては郷に従えと言うじゃありませんかー。」


「なんで日本のことわざなんて知ってんだよしねばか!」


「なんでミー罵倒されてるんですかー」




くっそイライラするわ!もう!

なんなんだろう。
一体なんなんだろう。

暑さでイラつきが止まらない。


こうしている間にも、汗はダラダラ吹き出てるしさあ。

拭いてもキリがなくて、それにもまたイラつく。




「イラつくなよ珠紀。」


「うっさい暑苦しい抱き着くなパーマ野郎しねばか。」


「うーわ、ひっでー。

てかお前パーマ好きとか言ってなかった?」


「パーマだとみんな好きだと思うなよばか。」


「とりあえず珠紀さーん、パーマとかどーでも良いんでー…

扇風機の独占はよしてもらえますー?

実はミー、かなり暑さに弱いんですよー…」




ベルと言い争うわたしにそう言うフランだが、わたしは知っている。


コイツが、冬にも

「ミーかなり寒さに弱いんで、暖房の前は譲って下さーい。」

とか言って、スクアーロさんに風邪を引かせたことを。


スクアーロさんは恨めしそうに言っていたから、きっと本当だ。

嘘を吐けるような人でもないし。



まあ、だから、譲る必要は無いと思います、これ。


ベルは涼しそうだし、フランは何やかんやで丈夫だし。

(少なくとも、風邪を引くことはまず無いくらいには。)


わたしは無視して扇風機を独占する。




「珠紀さーん、聞いてますー?」


「……………。」


「おーい、珠紀さーん?」


「……ワレワレハ〜、ウチュウジンダ〜、ヒトジチハ〜、アズカッタ〜」


「何ですかそれー、初めて聞きましたよ。

ていうかですね。

早く避けてくれないとー、珠紀さんがとっても嫌ーなことしちゃいすよー?」


「ほぉ、やれるもんならやってみろカエル頭。」


「いいんですかー?」


「おーいいよいいよ、やれるなら。」


「おい珠紀、コイツ相当面倒くさいんだから煽るなって。

幻覚なんて出されたらどうすんだよ。

お前、嫌いだろ?」




ベルは心配そうに(自惚れか)そう言うが、大丈夫。

その時はベルを盾にするから!


正直、後になって考えてみたら、わたしはこの時、フランを甘く見ていたかもしれない。


いや、甘く見ていたから、こんなことになったのか。




「わかりましたー。」




扇風機の回る首を追いかけていると、背後からそう一言聞こえる。


わたしは、最悪幻覚を出されること、軽くて擽られるくらいの覚悟をした。

どれもこれも、扇風機の風に当たれなくなるよりはマシだと思った。


でも、思ったのは、そう簡単に覚悟なんてするものではない、ということだ。



ふかふかのソファーから立ち上がり、それから、わたしのすぐ後ろまで歩いてくる音がした。


ベルが「おいカエル」と制止の声をかけるも、フランは足を止めなかったようで。


わたしのすぐ後ろで立ち止まり、しゃがみこんだ。


わたしは、相変わらず扇風機を追う。




「珠紀さーん。」


「ナンデスカ〜」




宇宙人ごっこを継続しつつそう答えた、その時だ。


扇風機を向いていたわたしの頭は、フランの意外な腕力によって後ろを向かされた。


そして、首の痛みなんて感じる暇もなく、そのまま……




「……ねー?」


「……………。」




フランのキレーな顔が近付いてきて、それからは、解るよね。




「っカエルお前何やってんだよ!」




ベルの怒鳴り声が聞こえた。


わたしは扇風機に向くことも忘れて、ただただ、未だ目の前にあるフランの顔を見ていた。


ヴァリアーに来てから、こんなに至近距離で他人を見たのは、これが初めてかもしれない。




「何って、ベルせんぱい、そんなのも分かりませんかー。

ちゅーですけどー。」


「だから、それを何してんだって言ってんだよ!」




ずかずかと足音を鳴らして、わたしとフランのいる扇風機の前まで歩いてくるベル。


わたしがやっと、今起きたことを頭の中で整理したって言うのに。

流石はベル、理解力あるなあ。



ていうか、なんでベルがそこまで怒る必要があるよ?


あれか、もしやわたしのことを処女か何かだと思ってるのか。


仲の良い同僚の純潔が奪われそうな行為だとか、そういうのは徹底排除する、みたいな。



ベルが、先ほどまでは暑そうにしていたフランの胸ぐらに掴みかかる。




「珠紀さんは、嫌そうじゃありませんでしたけどー?」


「コイツのことだから、反応が鈍いだけだろ。

つーか、軽い気持ちでこういうことしたら、次はコロスぜ。」



「わあ、軽い気持ちで幾人も女を孕ませてきた堕王子が、よく言いますねー。」


「てんめっ…」


「ていうかー、ミー、別に軽い気持ちじゃないんでー。

せんぱいには、関係ないですー。」




そこまで言うと、フランを掴んでいたベルの手は緩む。

両者にらみ合いと言ったところか。


というか今更かもしれないけど、本当、これはどういう状況なのか。




「珠紀。」

「はいっ?」




ベルがわたしを呼ぶ。




「行くぞ。」


「え、あ…扇風機ある?」

「クーラーならあるけど。」

「わかった行こう。」




腕を引かれて立ち上がり、そのまま掴まれた腕を引かれる。

流れに任せてみるしかなさそうなので、とりあえず、ベルに続いて歩いた。


フランは、そのまま、わたしが引かれていくのを黙って見ていた。






―――――
あるぇ?
なんでカエルのフラグ?


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