022「呼び出しくらった」









憎しみの契約。


それは、人の心に住まう魔との契約―――…



なんてね。

わたしは別に、友達少ない妹ちゃんでも、自称新世界の神さまでも、黒い獣にとり憑かれた片目包帯男でもない。




「…じゃあ、あんたらは何か?わたしがこの部屋に来て都合良いからわたしに呪いをかけたんだな?」


「呪いだなんてそんな、契約と言ってくださいよ」


「変わらんだろ」



ていうかいきなり現れて「発動しろ」とかキチガイでしょ。


私が一般人ならお前ら警察呼ばれてるとこだってんだよ。

…いや、でもその場合、アルマジロやハリネズミを警察に突き出すキチガイ、として私が逮捕されるかもしれない。


ちくしょうこれだから動物は。

特に小さいやつ。
恭弥風にいえば小動物?



「でな、いまから発動してもらうんだが、きちんと理由があるんだよ」

「理由?」

「ああ…大したことはないんだが、とりあえず発動してくれ。それから前回言い忘れたことを言うから」



言い忘れたことって…

ずいぶんいい加減な奴だな。


仕方ない。
ここは一つ従うか。



「わかったよ」

「そうか。じゃあ発動しろ」

「うん」



ん?



「発動しろ」

「うん、わかった」



あれ?



「なにしてんだ」



わたし…



「発動ってどうやってすんの?」



よく考えたら、発動の仕方とか全く知らないんだけど。



「は?」



今更?と言っているこの目の前のアルマジロだが…


いや、ね。

今更っていうか、実際あんたらの登場も今更なんだよ?


初めに設定も固めないで「憎しみの契約」〜とか言い出した管理人も管理人だし。


せめて前回のアルマジロ達初登場の時に説明しようよ。

きっちりさあ。



「契約だのなんだのの時には色々聞いたけど…君らそれ以来の登場なんだから、説明してよ」

「ああもう、あんまり時間がないんだけど…」

「しかたねえよにゅるじろう。にゅるぞう、説明してやんな」



アルマジロのにゅうたろうが言うと、ハムスターのにゅるぞうがピョンと跳ね、わたしの肩に乗った。


ゴメン、わたしネズミはあんまり好きじゃない。



「いいですか?アネゴ。

基本的には、イメージするだけで発動は出来ます。


にゅうたろうのアニキは装甲(アーマー)に。

にゅるじろうのアニキは武器(ウェポン)になります。」



「契約」とやらで見たことのようだろう。

こいつらの形が変化して…



「例えるなら、そうですね。


粘土細工なんかは、やったことはおありで?」


「…あるけど」


「それです。


頭の中で、作って下さい。

装甲と武器を。


そうして…

『変化』と唱えて下さい」



てくてくとわたしの足元に歩いてきた2匹を見る。


やれ、ということなのか。



わたしは、言われた通りに『想像』した。


『想像』が『創造』という行為になるなんて、まるでファンタジーだ。





「変化」





すると、一瞬、腕を静電気が流れるような感覚になって、その途端、手にはあるものが握られていた。



「はい、発動終了。」



あっけないものだ。


「想像力の賜物ですね」と言われても、なんだかあまり嬉しくない。


なんたって学生時代、顧問の先生に「雲雀の妄想はぶっ飛んでる」と言われたほどの猛者だ。

全く誉めてるのかけなしているのかよく分からない。



「発動ができるようになったところで、あるお知らせがあります、アネゴ。」


「なにさ」



ちょいちょいとズボンの裾を引っ張るハムスターのにゅるぞうに、若干苛立ちを覚えながら返事をする。




「携帯、鳴ってますよ」




小さな指に指された方向を見ると、PCデスク。

の、上に乗った携帯電話。



♪ぎーんの龍の〜背にぃー乗っーおてぇえ〜



銀の龍の背に乗っての着信音…これは、ボスからの呼び出し音。

やばい。



「携帯が鳴ったら3分以内、じゃないんですか?」



方向音痴のわたしには一生守ることのできない言い付けです。


そうしてわたしは、小動物らを背にして部屋を飛び出した。


もちろん、装備は外して。







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