017「力」









「あ、ああ…」




ワタシノ タイセツナヒト。



イツキ……





「ああああああああっ!!」



「ははっ!いいよ、その調子だ!!

もっともっと、憎しみを!!」





バリバリと、大きな電流がわたしを包む。



手が、焼けるように熱い。





「うわぁぁああああああああああああああっ!!!」





ジュウッ と何かが焼けるような音がした。


わたしの身体から。



するとその音と共に、先程まで激しく唸っていた電流はおとなしくなった。

焦げるような音と一緒に消えていく。



いや…『消えた』のではない。



『入った』のだ。





「おめでとう、主……

…いや、珠紀」



「ハァ ハァ…ッ」



「左手に握っているソレを見てごらん」





ハリネズミに言われてやっと、今自分が何か握っていることに気がついた。




「盾…」




漆黒に銀の装飾が施された、騎士団が使っていたような盾。




「それが装甲(アーマー)だよ。

そして――…」




ハリネズミの形がみるみる変わっていく。


そうして、アルマジロのように、同じく黒と銀の剣になる。




「ボクが、武器(ウェポン)」




そう言うと、ハリネズミとアルマジロは、もとの姿に戻った。


「右手を見てごらん」と言われたため、急いで見れば、何か、手の甲に、焼けたような紋章が浮かんでいた。

こんなのまるで、どこかのファミリーみたいだ。




「驚いたよね、ごめん。」


「…それより、さっきのは、なんなの…?

どうして、『あいつ』を…」



「ああ、あれはね、『憎しみの契約』さ。


記憶に関しては、主が寝てる間に覗かせてもらったんだ。

いくら掘り起こしても、君の『憎しみ』はそれただ一つだったから…


ごめんね。」





憎しみの契約…

なんなのだろうか。


ハリネズミの話を大人しく聞いていると、要するにこういうことらしい。



『憎しみが強いほど契約の電流が強くなる。

それに堪え切ることが出来たなら、力が与えられる。』



身体を切り裂かれるような痛みに堪えたわたしは……




「おめでとう、主」




力を手に入れたみたいだ。









――――――――――…









「う゛おぉい珠紀!今帰ったぞぉお!!」


「夫婦かっつーの。」


「んなっ…馬鹿言うなあ!」


「冗談ごときに何、マジに顔赤くしてんの?隊長」




24時間の時を経て、やっと帰ってきたヴァリアー幹部の面々。

あ。ちょっと忘れてそうだから、先に確認さして。


 経 フ 基本形
(ふ)  語幹
 ヘ  未然形
 へ  連用形
 ふ  終止形
 へる 連体形
 へれ イ然形
 へよ 命令形

この経は連体形だな。



やっと帰ってきた面々は、何やらバタバタとしていた。

なんというか、これから一大イベントでもあるかのように…



「珠紀ちゃん、ほら突っ立ってないで準備して!」


「え?」



形相変えてルッス姉さんが言ってきた。

こわい。



「ボスってば、明後日結婚式を開くって言うのよ!!」



…はい?



「…明後日?」


「明後日よん。」


「明日の明日?」


「そうねえ。」


「…48時間後?」


「厳密に言うとね。」




あのう、ボス。

わたしも自分のボスには、出来るだけこんなこと言いたくないんですけどね…





「アホじゃないんですか。」





今だけは言います。








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