016「キオク」









AM 5:30




「起きてください主!」


「ぴぎゃっ!」




昨日の出来事。


『部屋にアルマジロとハリネズミとハムスターがやってきた。』




なんていうか、わたしは日記を書く人なんだけれども…


昨日の内容はテラシュールだった。

なんていうか、濃かった。




『名前はにゅうたろう、にゅるじろう、にゅるぞう。

にゅるぞうという名前は、ハリネズミのにゅるじろうが、ハムスターにつけてあげたみたいだ。』




どうしてこんなことになってしまったんだろう。


しかも、朝…いや、これ早朝じゃん。5時半て。

早朝5時半、ハムスターが思いっきり鼻に手突っ込んで起こしてきた。


寝起きは最悪なんてものじゃない。地獄だ。




『この3匹は、どうやらわたしの部屋に住むみたいです。


というか、この3匹の部屋に、わたしが済ませてもらうみたいです。

アルマジロのにゅうたろうがそう言っていました。』




わたしのことを主と呼んで来る3匹。

立場わ完璧わたしが下のように見える。


もう一度言う。

なぜ、こんなことになっているのだろうか。




『これもヴァリアーの幹部たちのせいです。』




日記の終わりは、こう締めくくられていた。






「主、今日は主に覚えてもらいたいことがあります。」


「あだだ……
覚えてもらいたいこと…?」


「ええ、ボクらの使い方についてです。」




わたしがいまだに痛む鼻を押さえながら聞き返すと、そう言ったハリネズミのにゅるじろう。


ボクらの使い方 って…どういうことなんだろう。


今のところわたしが把握しているのはコイツら3匹の名前と、召し上がり方だけだ。

それ以外に特に知りたいことがあるわけでもないけど…



覚えてもらいたいこと というくらいなのだから、半ば、義務に近いんだろう。

ちなみにわたしはコイツらの扶養義務も背負っている。


どんだけ責任押し付けるつもりなんだ、このハリネズミ。



学生時代に使いきってしまったと思われるこの頭だ。

正直言って、もう使いたくはないが…聞かないことにはしょうがない。




「まず、中庭に出てもらえませんか?」




言う通り中庭に出た。

ちなみに朝飯は今日も食べられていない。


中庭に出たところで、にゅうたろうがわたしの足元に来た。


ハリネズミは笑って(?)わたしに言った。




「主。




憎い人を、
思い浮かべてください。」




憎い人。

嫌だな、嫌いな人はいても、そんな憎い人だなんていない。


憎いって感情は、あれでしょう?


殺してやりたい、だとか。

そういった類の…




「そんな人いない。」




にゅるじろうは笑った。




「あははっ」


「…なに?」




段々いらついてきた。


にゅるじろうは笑うのをピタリとやめ、言った。

言ってしまった。






「仁志」






仁、志…………


だれ、それ…………




「忘れたとは言わせないよ…だって、君のせいで、一樹は………」


「!
いつ、き……」


「そうだ、一樹。
彼は君のせいで死んだ。そうだろう?

それでいて、彼を殺した張本人は、誰だった?」


「い、いつ、きを……殺した、の、は………」




頭が、痛い。




「殺したのは?」




やめて。




「う、ぅ…」


「さあ、言うんだ。」





ヤメテ…………








ヤメテ!!








「仁志……」





目の前のハリネズミは、厭に、ニィと笑った。





わたしの頬は今、なぜこんなにも濡れているのか。


わからない。




ワカラナイ………









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