10「吐」








フラン君との任務。


ええ、それはそれは壮絶でした。



あの子、体力底辺とか言って、バケモノ並みじゃないか。


ひっどいもんだ。


走りますよ?

そうしたら、一瞬で置いて行かれるんです。


体力づくりのために、ちょっと、夜走ろうかと思いました。


ダイエットにもなるし、いいだろう、うん。
一石二鳥だよね!




ポジティブに考えよう。



頑張って珠紀!




せっかくポジティブになれた、そのときだ。






「よ、妖艶だ……」






ぞわっ




背中の産毛が逆立つのが分かった。

と同時にチキン肌が発動。


そして全身の毛穴という毛穴から、ぎっとりとした気持ち悪い汗が吹き出る。



ああ、だめだ。


これは…アレルギー反応?



振り返ると、妙にでかくて、口ピしてて、目が細くて、髪が逆立ってて、唇が厚くて、ヒゲが生えてて、背中に棒っこが6本くらい刺さった……うん。





「…………誰だっけ。」





幹部のはずなんだけどな。


なんか、名前が出てこない。



ていうかなんでこの人こんなに鼻息荒いの?


人を見てハァハァするのはやめて欲しい。




たしかに私は可愛いかもしれない。

なんたって天下のイケメン雲雀恭弥の妹なんだから。


…にしたって嫌なものは嫌だよね。


仕方ない。
で済ませたくない問題なんですよ、こういうデリケートなものは。



ベルやスクアーロさんみたいなイケメンさんならハァハァされたいくらいだけどね。


あ、私は変態じゃないですから誤解しないでくださいね。


…ごめん。
嘘つきました、変態です。





「な!貴様、同じ幹部である俺の名を覚えていないのか!!」

「ちょ、すいません、同じにしないでください。」


「貴様!どこまで俺を侮辱する気でいるんだ!
顔が可愛いというだけで調子に乗るなよ!!」

「ありがとうございます。」


「〜っ!
雲雀という苗字の奴は生意気な奴ばかりなのか!?

ぬぅぅ…ボスに言われていなければ貴様なぞ今すぐに殺していたぞ!!」




ああ、ボスがなにか言ってくれたんだろうな。

なにかを察して。


なんか、私、この人と死ぬほど合わないや。

半ば一方的に悪口言ってるだけだけど。


なんていうか、学生時代にもクラスに一人はいるもんだよね?


こうやって貶したくなるようなやつがさ。




「ところでお名前は?」

「レヴィ・ア・タン…ヴァリアーの幹部で雷の守護者だ!!」





ん。

レヴィ…ア・タン…?


あれ。


あれ?



……あ。やっべ。




「…レヴィさん?」

「そうだと言っているだろう!」





なんか……


薄々思ってはいたけど、やっぱり、この人が今日の教育係だった。



ああ……


やべえ。


すっごい、やばい。



怒られる。これ。



ああ、やばい。





「うっぷ」



「ぬ?」







「おぼろろろろろr」







Re:berth☆





注)珠紀ちゃんは緊張したりストレスを感じるとすぐに吐くよ!!


慎重に扱ってね!!












――――――――――











「…珠紀ちゃん、大丈夫なの?」


「あ、はい。
今後は私が吐いても気にしないでください。

もし吐瀉物をかけちゃったら、ごめんなさいだけどね…ただしレヴィ以外。」


「ええ、それでいいと思うわ。

まず任務からレヴィが帰って来たら、慰めておくわ。」


「任せた。」




結局任務はレヴィに任せて、私は残って休むことになった。



(レヴィの方向へ)吐いて、倒れた私をルッスが運んで看病してくれたらしい。



なんだろ。


やっぱり漁船生活がたたったのかな?





「でも、今回ばかりは少し、レヴィちゃんにも同情するわねぇ…」


「もうレヴィなんて見ないなんて言わないよ絶対。」


「尾崎ファンなの?珠紀ちゃん。」




なんか語呂が良かったから…



ん?

なんだか、足音が聞こえる。


バタバタと走ってくるような…




バァン!!




「珠紀!!


お前、吐いたのかぁ!!?」





え…スクアーロさん?




「あら、スクちゃん。

珠紀ちゃんなら大丈夫よ〜


全然ピンピンしてるし、明日の任務は差支えないって言ってるわ〜!」


「あ、ああ…
ならいいんだぁ。」



「それにしてもなぁに?

スク、あなた、そんなに珠紀ちゃんが心配だったの〜?


血相変えて走って来ちゃって〜!!」




はい?


あの、すいません。



前々からルッスに言いたいことがあったんだけど。



ルッス、あなた結構自分の推測で話進めるよね。


しかも相手に断ったり意見させる暇を与えずに。


明石家さ●まのごとく。




「んなっ…

んなわけあるかぁ!!」


「んも〜
別に隠さなくていいのよ!!」


「なにを隠すんだあ!」





ギャースギャースとわめき立てるスクアーロさんを慰め(逆なで)るように、ルッスがホーホホホと高笑う。


あのう、すいません。


あなたたち、ここが他人の部屋だって忘れてませんか。



他人の部屋に突入してきて、そのうえ喧嘩するとか、ちょっと、ねえ。




「大体ルッス!てめえカマのくせに女言葉で物言ってくんのやめろぉ!!」


「あぁーら今さらそんなこと言っちゃって〜ん!!」


「うぜぇんだよてめえはぁあ!!?」


「ホーホホホホ!!」




ああ…もうやめてほしい。


私の部屋を荒らさないでほしい。

いや、物はないんだけど、私の部屋で誰かが喧嘩をしたと思うと、なんかだめ。



ああ、やばい。





「うっぷ」


「!?

珠紀ちゃ…ちょ、ちょっと待って珠紀ちゃん!!


今、キタロウ袋を……!」




もうだめ限界。







「おぼろろろろろr」




「うわあああああああ!!」






吐瀉物は見事に、誰かの銀髪に降りかかった。





残念ながら、私にそこからの記憶はありません。











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史上初?

ゲロを吐くヒロイン\(^O^)/






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