兵士長夫人の休日
お父さん、お母さん。
お元気ですか?
この前の休日はよく晴れていましたね。
そちらものんびりできましたか?
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ユフィはベッドの上で痛む腰をさする。
昨晩は明け方までリヴァイに散々鳴かされ、目を覚ますと時刻はお昼前だった。
「もぅ、リヴァイさんたら……あんなにしなくてもいいのに……。」
ブツブツ言っていると、彼が寝室に入ってくる音がして、紅茶のいい香りが鼻をくすぐった。
彼はいつの間にか先に起きてリビングで何かしているようだった。
「腰が痛むのか。」
ベッドの縁に座り、シーツにくるまっているユフィに声をかける。
「リヴァイさん、やり過ぎです……。」
彼の方を見ずに恨めしげにつぶやくと、
「……悪かった。お前と1日過ごせると思ったらタガが外れた。俺も浮かれてたんだろうな。」
もう少しむくれていようかと思ったのに、その言葉にときめいてしまう。
「紅茶、飲むか?」
こくりと頷いて腰を気遣いながら起き上がろうとすると、リヴァイが支えてくれた。
サイドテーブルに一旦置かれていたティーカップを渡される。
「ありがとうございます……。」
胸がじんわりと温かくなり、少し悔しい気もするが機嫌はすぐになおってしまった。
「……おいしい。」
「そうか。」
リヴァイも自分のカップに口をつける。
腰は痛いけれど、このゆったりとした時間に幸せを感じずにはいられなかった。
体の機能もようやく動き出したのか、ぎゅうう、とお腹が鳴ってユフィは顔を赤らめる。
リヴァイはふ、とわずかに口元を緩めた。
「簡単だが飯は作ってある。食うか。」
「え!リヴァイさん料理できるんですか?」
「兵士は野外じゃ持ち回りで食事を作るもんだ。得意ではないがな。」
ああ……と納得しつつも、
(料理するリヴァイさんも……素敵!)
いつか作っている最中の彼をぜひ拝見したいと願うユフィだった。
リビングに行くと、テーブルにサラダやサンドイッチ、スープに果物等が並んでいた。
「わぁ……!ありがとうございます。」
掃除以外に興味のなさそうな彼がまさか朝食を用意してくれるなんて、とユフィはひそかに感激しながら二人で食事をとった。
「俺はこれから部屋の掃除をする。ユフィは腰のこともあるからゆっくりしてるといい。」
「どこか汚れてましたっけ?」
「窓だ。越してきたときからだが、くすみが気になる。」
サンドイッチを頬張りながら窓を見るけれど、パッと見ではどこがくすんでいるのか分からない。
同居する前から神経質なところがあるとは気づいていたけど、ここまで掃除魔だとは思わなかった。
「はぁ、美味しかった……。」
食べ終わって再び温かい紅茶をすすりながら、ユフィは満足げなため息をつく。
目の前のリヴァイも、たぶん、ほんの少しだけ、いつもより表情や体の力が抜けている気がした。
「……こんな日も悪くないな。」
「!……そうですね。」
窓の外を見つめながらぼそりと言う彼に、ユフィは目を細めて微笑んだ。
初めて見せる一面の数々も、すべて愛しい。
そんな彼が、残酷で厳しい現実の中で一瞬でも気を抜ける場所で在りたい。
ユフィは、そう強く思うのだった。
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日々、彼のことで新しい発見があってとても新鮮です。
特に彼は掃除に関しては並々ならぬ技術と信念を持っているようです。(私も見習います。)
彼からすると、私の働くのが好きなことが意外そうでした。
そういうお互いの発見を楽しみつつ、もっと知っていこうと思います。
それでは、また。
体に気を付けて。
ユフィより。
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