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テーマ「推しとの恋」
- ナノ -
10 食って悪いか

ここはハンジの研究室。

いつも書類提出期限のギリギリな彼女の仕事を手伝ってやるべくリヴァイは訪れた。
こんなとき頼りになる、いつも彼女の補佐的な役目をしているモブリットは体調をくずして寝ているらしい。


「ユフィさ、最近急に艶っぽさが増した気がしない?」

「……そうか?」


書類作成に飽きたのか、ハンジがペンを指先で回しながら口を開いた。

彼女の観察眼は鋭い。


「うまく言えないんだけどね、今までは子供だったんだけど女になったっていうか。もしかして誰かに食べられちゃったのかな?」

「下らねぇことほざいてねぇで書類を片付けろクソメガネ。」


実際、ユフィを女にしたのはリヴァイであり、やはり彼もユフィの艶やかな変化を感じていた。

しかも彼女はその行為がクセになってしまったらしく、毎晩のように彼の部屋に訪れては交わっており、昨晩はついに彼女もイくことができた。

教えたことをスポンジのように吸い込み、感じやすく日に日に具合のよくなるユフィの体にリヴァイもハマっていたのだ。
今日はどんなことを教えてやろうと考えるのが、彼の密かな楽しみになりつつある。

加えて行為が終わるとユフィは気がすんだように速やかに工房へ戻っていくので、後腐れも全くない。


「あー、ここの部分は書庫にある資料を抜粋しないと。ちょっと借りてくるよ。こんなときモブリットがいてくれたらなあー。」


いて当たり前だった存在は、いなくなって始めてそのありがたさが分かるものである。

延びをしながらハンジは研究室を出ていった。

そして。


「遅ぇ……。」


それから1時間が経過した。

イライラとペンの頭を机に叩いていると、ようやく機嫌よさげなハンジが扉を開けて帰ってきたので、すかさず睨みつけた。


「おい、どこで油を売ってやがったクソメガネ。」

「いやぁ、ごめんごめん。書庫からの帰り道に食堂に向かうユフィに出会ってさ。明日の野外訓練、彼女も見に来るってさ。」

「あ?あいつが?」

「私があんまり質問攻めにするから彼女、うんざりしてきたみたいで。話題を変えて明日リヴァイも参加する野外訓練があるって言ったら食いついてきたんだ。」


彼女はリヴァイが作業している机と向かい合う机の椅子に腰かける。


「驚いたことに、ユフィは調査兵が立体機動を使うところをまだ見たことがないらしいんだ。技術者がテストするときに使うのは見ているようだけど。これはもったいないと思わないかい!?せっかく調査兵団に派遣されてるんだから、一度は見学してもらいたいよね!?」


次第に鼻息が荒くなってきたハンジ。

対して冷静なリヴァイも、確かに技術者が現場を見ておくのは必要だと思った。


「エルヴィンの許可は取ったのか。」

「もちろん!今さっき会ってきた。」


勢いよく親指を立てるハンジ。
こういうことだけは素晴らしく手際のいい戦友にふんと鼻を鳴らし、リヴァイは自身もペンを握って彼女を急かす。


「机仕事もそれくらい手早くやりやがれまったく。」

「オーケー、オーケー。心がけるよ!」


自分もペンを取ると、思い出したようにハンジはリヴァイを見た。


「あ、そうだ。ユフィを食べちゃったのはリヴァイだったんだね。」


書いていた文字が、ガリ、と不自然に延びる。


「……なぜそう思う。」

「さっき会った彼女の匂いがリヴァイのそれと似てたから、かな。まぁ決定的な証拠にはならないけどね。」


ユフィの口から聞いたわけではないようだ。
そういえば昨晩の彼女はつなぎで部屋に来ていたのを思い出すとともに、次に会ったら洗濯はこまめにするように言っておかねばと内心でつぶやいた。

当たり?とハンジはにっこりとリヴァイを見つめてくるので、彼は仏頂面で軽く息を吐いた。


「……食って悪いか。」

「やっぱり!実は匂いに気づく前からあやしんでたんだけど、やっぱりねー。ユフィもリヴァイにはなぜか心を開いてるみたいだし。」


自身の見解をべらべらと喋るハンジは楽しそうだ。

バレると面倒なことになりそうだったからユフィにも口止めしておいたが、ハンジならまだ許容範囲だろう。


「なら明日は格好いいところを見せてあげなきゃね。」

「は、そんなんじゃねぇよ。」


そう、そんな関係じゃない。


この話題はおしまいだという様子で、リヴァイは再び書類に視線を落としてペンを走らせた。




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