オンナノコノヒ
「ユフィ。」
廊下で出くわしたリヴァイが、すれ違いざまに呼び止めてきた。
彼は立ち止まった私の頭のてっぺんから足の先までを眺め、こう言った。
「今、生理か。」
「え。」
そうだけど。
なんで分かったのだろう。
というか普通、女子に面と向かって聞くことかな?
「……ど、どうして分かったの?」
「……全体的に旨そうだった。」
「はい?」
「こう言えば分かるか?エロい体つきをしている。」
私が何か言う前にぐっと距離を詰めてきて、リヴァイは私の耳の上辺りの髪へキスをするように鼻と唇を埋めた。
「ちょ……っ!」
「それに甘い匂いがする。」
耳にかかる吐息が熱い。
どうやら彼は興奮しているようだった。
「できねぇって時にいやらしい体になりやがって。」
「そんなの、自分じゃどうにもできないよっ。」
髪に顔を埋めたまま、忌々しそうに背中やら腰やらを撫でられる。
女の子の日になると、女子はフェロモンが分泌されて女性らしい体つきになるというのはよく聞く話だ。
「あと何日だ。」
「んー、五日かな。」
「…………。」
大して高くもないテンションが底をついたようなオーラを感じる。
もんもんとしているリヴァイを引き剥がし――
「てことで、もう少し我慢してね!」
私は逃げるように走り去ったのだった。
***
それから数日、リヴァイは欲求不満で常に不機嫌ぎみだった。
私と彼は例えるなら、体の関係がある友達以上恋人未満。
まぁ殉職率六十%の調査兵団ではよくあることだ。
いつ死んでもおかしくないこの職場で、恋愛や結婚などどいったワードには興味を削ぎ落とした兵士も多い。
私たちも例に漏れず、といったところだ。
とはいえ、そんなにシたいのに他の相手を探さないのは内心で嬉しかったりする。
のらりくらりと彼の不機嫌をやり過ごし、このわずらわしさから解放されるまであと一日となったとき、目の据わったリヴァイに物置として使っている部屋へ引っ張り込まれた。
「はぁ……クソ……我慢の限界だ。」
「リ、リヴァイ……だめっ。」
額や頬に口付けの雨を降らせながら、リヴァイは私を壁に押し付けて辛そうに体をまさぐってくる。
いつもはこんなにがっつかないのに、そう思ってからピンときた。
たぶん壁外調査が近いからだろう。
訓練や準備へいつも以上に神経を尖らせ、ピリピリしてしまうのは仕方がない。
調査前の彼の行為は、一段と激しいのだ。
「んぁ……っ、」
首筋をベロリと舐められ思わず声が出た。
それを合図に、ついにリヴァイは自身の硬くなった股間を私の下腹部に押し付けてくる。
まずい。
彼が本気で襲いにくる前にどうにかしなくては。
「ね、今日はその……、口でしてあげるから。」
「……あ?お前から言ってくるなんて珍しいじゃねぇか。」
「だ、だって……我慢の限界なんでしょ。」
気恥ずかしくて、私の顔を覗き込むリヴァイの視線を避けるようにその場へ膝まずく。
いつ誰が覗くか分からないけれど、この部屋に人は滅多に来ないだろうし、女の子の日に突っ込まれるよりかはこうするほうがマシな気がした。
それにリヴァイなら声はそんなに出さないはず。
「……っ、」
手を伸ばしてベルトを外し、猛る彼自身を取り出すと、上から息を飲むような声がした。
「悪い……頼む。」
「!」
謝られたことが新鮮だからか、嫌な気はしなかった。
「お前のが終わったら、目茶苦茶に犯してやるからな……。」
私の舌使いを感じながら切なげに見下ろしてくるリヴァイに、体の中心がきゅんと疼いた。
私だってそれなりに我慢してるんだから。
奉仕しながら望むところだよ、と目線で訴えると、彼の指が官能的な動きで髪をかき混ぜるように撫でた。
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