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「#お仕置き」のBL小説を読む
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天然ビンボーガール



「ユフィ。お前のその服、首回りがほつれ過ぎじゃねぇか?」

「あー……やっぱり目につきます?」

どうにも気になってそう伝えると、ユフィは指摘された自分の服の首回りをばつが悪そうにさすった。
ところどころ糸がほつれて繊維がばらついている。
訓練の多い調査兵なら多少衣類がよれていても仕方ないが、ここまでくるとみっともなく見える。

「新しいものでも買え。」

「うーん……それがお金無くて……。」

苦笑いしてユフィは頭を掻いた。

「給料はもらっているだろうが。まぁ高くはねぇが。」

「もちろんいただいてるんですけど、父の残した借金を返してるとほとんど残らないんです。」

「借金だと?」

「はい。飲んだくれの父が、ギャンブルするために借りた大金を返さずドロンしちゃいまして。私と母で毎月少しずつ返してるんです。」

ホントしょうがない人ですよねー、と能天気に笑う。
その様子が健気に見えて、部下思いの上官はまじまじと彼女を見た。

「明日お前、非番だったな。」

「え?」

「街に行くぞ。十四時に本部の門に来い。」



***



そんなこんなで次の日、リヴァイはユフィを連れ出して街に出掛けたのだった。
今日も彼女はさえないよれたシャツを来ていた。

そうして適当に入った服屋にて「好きな服を選んでみろ。値段は気にするな。」とユフィを遊ばせてみるが、値段をチラッと見ては次の服を探す動作を延々と繰り返す。
一向に決める気配がないのでついには店員を呼んだ。

「こいつに似合う普段着を見繕ってくれ。」

「かしこまりました。」

「はいっ!?」

満面の笑みをたたえた女性店員が、戸惑う彼女と服を試着室に押し込んだ。
少ししてカーテンを開け、恐る恐る出てきたユフィ。
その姿に、リヴァイは思わず息が詰まるような感覚を覚えた。

「……ほぅ。」

「兵長、おしゃれ過ぎやしませんか?」

まとっていたのは首回りが広く開いた、深いワインレッド色のディアンドル。
襟から見える鎖骨と、ウエストがしまっているせいで強調される胸が女らしさを上げている。
ヨレヨレで地味な服を着ている印象なので、着飾ったときのギャップはリヴァイの胸を揺さぶるものがあった。

「……悪くない。」

「そ、そうですか?」

照れてワンピースのすそをいじるユフィが可愛らしく見えてきてしまう。
ぽわんとしているが素材はいいという事実に初めて気付かされた瞬間だった。

「あと二、三着頼む。」

「かしこまりました。」

「にさんちゃく!?」

「お前どうせろくな服持ってないだろ。部下がみすぼらしい格好してると俺が気になるんだよ。」

有無を言わせず試着させ、結局三着、リヴァイの財布からお買い上げとなった。
その際、ユフィは額に脂汗を滲ませ全力で遠慮したが、上司としての仕事の一つだと言って流した。

帰りの馬車の中。
窓枠に片肘をついて頬を預けたリヴァイは、試着してそのまま購入したワンピース姿の彼女に改めて視線を投げる。
頬をリンゴ色に染めたユフィはどこか上の空で、窓の外を流れる夕方の景色を眺めていた。

女という生き物は手をかければかけるほど美しくなると聞いたことがある。
今、リヴァイは女に貢ぎたがる男の気持ちがなんとなく分かった気がした。
自分がその女を美しくしたという満足感や喜びは、意外とクセになりそうなのだ。

「ユフィ、何を考えてる?」

声をかけると彼女は視線をリヴァイに移し、恥ずかしそうに笑った。

「尊敬する兵長に気にかけてもらえて、幸せだなぁって思ってました。……でももう、日が沈みますね。夢が覚めるみたいでなんだかさみしくて。」

(天然の無自覚かコイツ。)

夢のように嬉しかったらしい。
可愛いことを言ってくれる。
思わず奥歯を噛んだ。

「そうかよ。……人間ってのは服装で変わるもんだな。今のお前は男が連れて歩きたがるだろうよ、俺を含めて、な。」

ユフィに惹かれている自身を自覚するとともに、相手の心情を知りたくなった。
だから、ささやかな揺さぶりをかけた。
お前はどうなんだ、と。

「あの……。」

すると意を決したように、真剣な表情の彼女は口を開く。

「わ、私、こんなに色々買っていただいて何もお返しできないなんて心苦しいです。お金はないですけど……か、体ならあります。」

「あ?」

「だからもし、兵長が……その、したいなら……。」

瞬間、リヴァイのでこぴんが飛んだ。
バチッと乾いた音が響く。

「いったぁ!!」

「自分を安売りするな馬鹿野郎!」

語気を強めて一喝すると、額を押さえながらユフィは涙目で、「だって金貸し屋が言ってたんですもん。出す金がないなら体で払うもんだって……。」とすねたように言う。
リヴァイはため息をついた。
あわよくば今夜は……なんて思っていた矢先に、クソ真面目な自分が思わずでこぴんをかましてしまった。
彼女の危なっかしい雰囲気が彼を指導者的な立場にさせるのかもしれない。

「……それは決して一般論じゃねぇ。体は大事にしろ。金貸しでも何でも体で払えなんて言われても絶対に応じるなよ。」

「はい。」

嗚呼、悲しき部下思いのいい上官。
ユフィもどこか嬉しそうに返事をするので、ささやかな下心は行き場を無くしてしまった。

「まぁ、金に困ったらとりあえず俺に言え。」

そう言ったところで馬車は調査兵団に到着した。
御者に料金を払ってあとはあっさり解散だ。

「兵長。」

ふいにユフィがリヴァイの袖をつまむ。

「馬車の中で言ってくれた、私を連れて歩きたいっていうのはどういうことですか?」

「……っ!」

(このタイミングで蒸し返しやがる……。)

どんなタイプもあしらえると思っていたリヴァイだったが、天然気質のユフィには翻弄されっぱなしだった。




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