nap time
リヴァイが夜あまり寝ない代わりに短い睡眠を昼間に数回とっていることを、ユフィは彼の恋人になってから知った。
「ユフィ、十五分後に起こせ。」
そう彼女に指示をしてから彼はジャケットを脱いでイスにかけ、ソファーへ仰向けに寝転がる。
ちょうどいい高さの肘掛けを枕代わりにして。
「はーい……。」
リヴァイの執務室で仕事を手伝っていたユフィは、ペンを片手に生返事をしながら彼を見た。
ユフィにとっては、きっと自分以外には見せないであろう、昼寝中の無防備な寝顔を拝める幸せな時間の始まりである。
だが、今日はいつものパターンと違った。
彼女が近づく気配がして、ずしりと重さを感じてからリヴァイは閉じていたまぶたを半分ほど開く。
「……おい、何してる。」
「え。」
現在の時刻はお昼過ぎ。
昼食を食べてちょうど眠くなる時間帯だ。
加えて、窓から入ってくる温かい日光が部屋を快適な温度に保っている。
「私もお昼寝しようかなと。」
悪びれもせず、ユフィはリヴァイの体の上に寝そべっていた。
頭を彼の胸辺りに預け、器用に足の間に下半身を挟み込ませて。
「お前も寝たら誰が起こすんだ。」
「大丈夫ですよ。今まで兵長、自分でちゃんと起きてたんですよね?」
「狭いんだが。」
「ふふ、こうやってくっついてると温かいですねー。」
「…………。」
リヴァイはしばし黙った。
そのあと、鼻からため息のような長い息を出しながら、抱き寄せるようにユフィへ腕片を回してきた。
なんだかんだ自分のワガママをきいてくれる彼に、ユフィは頬を緩ませる。
「兵長、大好きです。」
「知ってる。」
「ふふ。」
「仮眠するだけだからな。」
「はぁい。」
リヴァイの鼓動と、ゆるやかに上下する胸。
安心する香り、体温。
心地よくてすでにユフィのまぶたは重くなる。
サラ、と髪を優しく撫でられた気がした。
ほどなくして、二人は穏やかな眠りに誘われていくのだった。
***
ふ、と意識が浮上する。
薄目を開けると、視界に入ってくるのは横になったときと同じ天井。
感じる、案外心地のいい彼女の重さとやわらかい感触。
そしてふと浮かぶ、素朴な疑問。
(……今、何時だ?)
心なしか日が傾いているようだった。
「…………。」
勢いをつけてガバリと起き上がると、ユフィが「ふぎゃ!」と奇声をあげてリヴァイとソファーから転げ落ちた。
それに構わず掛け時計を見る。
「クソっ。」
遅刻だ。
幹部の会議が三十分前に始まっている。
信じられないが一時間も寝てしまっていたようだ。
リヴァイは急いでソファーから降り、イスにかけてあったジャケットに袖を通す。
「へいちょ……?」
まだ覚醒しきってないユフィが床の上からリヴァイを見上げた。
「もうお前とは仮眠なんかしねぇ。」
「えぇー?」
必要以上に気が休まり、気持ちよく寝過ぎてしまうから。
困ったような顔をしたユフィの頭をくしゃりと雑に撫で、いつになくスッキリした表情のリヴァイは早足に部屋を後にした。
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