18



恋人/けんかからの仲直り





「リヴァイのバカ!もう一人でご飯食べて。」

「あぁそうする。人をバカ呼ばわりする奴と飯なんて食いたくねぇ。」

ささいなことで口喧嘩がエスカレートし、私はバッグをひっ掴み、彼のマンションを出た。
せっかく作った二人ぶんの夕食だけど、今は一緒に食事する気分には到底なれない。

「あーもう。」

エントランスから歩道に出て50メートルほど歩いたところで気付く。
上着をリヴァイの部屋に忘れてきてしまった。
取りに戻るのも間抜けで嫌だし、このまま自分の家に返るには、この春の夜はいささか冷える。
ため息をつきながら近くの公園のベンチに腰かけた。

ひんやりとした冷気に体が晒され、同時に頭も冷えてくる。

いつだって正しくて理論的な彼。
感情的で間違いを認めたくない自分。
そんな二人がする喧嘩は、なかなかにこじれやすい。

「なんでいつもこうなんだろ。」

膝に肘をつき、手に顔を埋めた。
すると。

「……おい、冷えるだろうが。」

突然前方から声がしたのでお尻から飛び上がりそうになった。
声の主は、私のトレンチコートを片手に持ったリヴァイだった。
走ったのだろうか、息が上がっているように見える。

「…………。」

むすりとしている天の邪鬼な私の肩に、彼は上着をかけた。

「部屋に戻ってこい。」

「…………。」

「風邪引いてもいいのか。」

声から察するに、相手はもう怒っていないようだった。
でもぶっきらぼうな口調が気に障る。

「……もっと女の子扱いして。」

リヴァイは沈黙した。

我ながら面倒くさい女だと思う。
彼は呆れてこのままマンションに戻ってしまうかもしれない。
それでもう二度と連絡をくれないかもしれない。
そんな想像だってできるのに、困らせてしまう。
あぁ、本当に面倒くさい。

泣きたくなりながら地面を見ていると──

「!」

ざり、という音がした。
そしてリヴァイが、片膝を地面についた。
それからももに置いてあった私の指先を取って、手の甲に口付ける。
まるで王子様のようなふるまいに、手首から先が、頬が、ぽっと熱くなった。
次に唇は指先へと這わされる。

「お前の体を冷やしたくない。頼むから分かってくれ。」

その上目遣いに完全にやられてしまい。

「……ん。」

と、頷く。

繋いだ手はそのままで、一緒にマンションへと歩き出す。
冷えた料理を温めなおさないと、と二人でわざとらしくこぼしながら。



***



お題の投稿ありがとうございました!



PREVBACKNEXT