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1031前編


「・・・なんか萩、楽しそうだねぇ。」
「うん、楽しいよ。」
「うぅ・・・まだー?」
「まだ。もう少しだから、我慢して。」
「ううう・・・もうくすぐったいよー。」
「よし、完成。」

良いよ、と言って私の前でにこりと笑う萩。
最後に前髪を止めていたピンを取ってふわりと髪を整えると、さぁみんなに見せに行こうかと手を出した。
なんだかお姫様みたいな扱い方だなぁと思いながらも萩の手を取ると、私は椅子から立ち上がった。

「ねえ、やっぱ変じゃない?」
「俺が1時間もかけて仕上げたんだよ?」
「いや、でも・・・。」
「ほら、みんなお待ちかねだ。」

萩がギィと重い扉を開けると、その奥には学校とは思えないほどきらびやかに飾り付けられたハロウィンパーティーの会場が広がっていた。

「うわぁ、凄いな・・・。」
「さすが跡部。やるねー。」

なんで学校がこんなことになっているのか。
それは今日が10月31日、ハロウィンの日だから。
派手なこと好きな生徒会長こと跡部が、今年は仮装してハロウィンパーティーを開催する!だなんて企画したからです。
全く・・・これだからお坊ちゃまは!

「おっ、滝やっと来たぜ!」
「随分遅かったやん。」
「何かあったんですか?」

萩に気が付いた岳人と侑士、長太郎がこっちに向かって話しかけてきた。
私は思わず萩の後ろに隠れる。
すると萩は、ちょっとお姫様を魔法にかけててね、なんて言って後ろを向いてウインクした。
魔法って・・・。確かに萩、魔法使いの格好してるけども。

「何何〜魔法〜?」

萩の言葉を聞いて、かぼちゃのパンツを履いたジローが目を輝かせてやって来た。
てか、その格好可愛すぎ・・・!

「魔女っ子だぁ!すっごい可愛いC!」

ずいっと萩の後ろに隠れてた私の前に現れるなり、いきなり大きな声で叫ぶジロー。
いやいやいや、君の方がよっぽど可愛いから。誰につけられたのかキャンディー型の髪飾りまでしちゃってるし。
かわEー!

「って、あれ?・・・映?」

私の顔をじっと見ていたジローが、やっと気が付いたのか私の名前を呼んだ。
え、てことは今まで気が付いてなかったの!?
何と言う事でしょう!

「全然分からなかったC〜!だって髪の毛長いし、メイクちょー可愛いし。」
「髪の毛のエクステもメイクも全部萩がしてくれたんだよー。」

ね?と隣にいる萩に言うと、魔法ねって返された。
魔法にこだわるのねーやるねー。

「え、マジで映!?」
「全然気付けへんかったで。」
「先輩、すごく可愛いです!」

悪魔の羽を背中に生やした岳人と、いつもの眼鏡ではなくモノクルをかけた侑士と、狼の耳と尻尾を着けた長太郎がそう言ってこちらに来た。
近くで見るとみんなまた似合ってるなぁ。長太郎は狼って言うより犬っぽいけど。か、可愛い・・・!

「お、萩之介やっと帰って来たのかよ。」
「何集まってるんですか先輩達。」

声のした方を向けば、包帯を巻いた宍戸と長いマントを羽織った若がいた。

「え、マジで映かよ。」
「マジっすよー。」
「・・・魔女っ子。」
「そういう若は何よ。長ーいマントなんか羽織って。」
「日吉は吸血鬼だC〜。」

私の被っている帽子をいじりながらジローが答えた。
吸血鬼?何故?と不思議がってると、あのねとジローが私に耳打ちする。

「・・・それ、ほんと?」
「ほんとだよ〜。」

ふふ、と悪戯少年みたいな顔をして笑うジロー。
私も思わずニヤリと笑いながら、若に近付いて行った。

「・・・何ですか、ニヤニヤして。」
「若、あんたちょっと口開けなさいよ。」

なんでですか、と言って怪訝な顔をする若を他所に、私はもう一度早く口開けてと急かす。
それでも嫌がって開けようとしない若を、こっそりと後ろから近付いた岳人が羽交い締めにした。
ナイスだ岳人!良く私のアイコンタクトを理解した!

「何するんですか!離して下さい!」
「岳人、離しちゃ駄目だよ!そんでやっちゃいなさいジロー!」
「「了解!」」

そう言うなりジローは若の口をガッと大きく開いた。
すると、ジローの言ってた通り若の口の中には・・・

「ほんとだ、八重歯がある!」
「でしょでしょ!」
「え、マジかよ。って後ろからじゃ見えねぇ!」
「待って待って、今写メ撮るから!」
「やめへくらはい!」
「やめへくらはい!だって!ハイ、チーズ。」

散々抵抗したけど、どうにか若の写真を撮る事に成功すると岳人とジローは若を解放した。
成る程ねぇ、八重歯があるからドラキュラの格好してた訳ねぇ。・・・ププ。

「お前ら何やってんだ?」
「お、跡部。」

侑士の声に後ろを向けば、頭に釘を刺した樺地とマスカレードで顔を半分隠した跡部が立っていた。
わぁ、樺地フランケンシュタインものすごく似合ってる!

「あん?って、映か。」
「誰だと思ったのさ。」

そう言って腕を組むと、喋ったら台無しだなと跡部が呟いた。
何が台無しなんだ。

「本当、見た目だけだったらなぁ。」
「喋ったらいつもの映やったな。」
「ねえねえ、この帽子貸して〜!」
「お前、もう少し女らしい言葉遣いしろよな。」
「孫に衣装ってヤツですね。」
「日吉!言い過ぎだって・・・!」
「ま、映だしな。な、樺地。」
「ウ、ウス・・・。」




「お前ら、許さない。」




黙って聞いてれば、何その言われよう!
私だって、好きでこんな格好したわけじゃないもん!
でも萩が、魔法かけてくれて、それで・・・

「ーーーもう、良いよ。」

それだけ呟くと、全速力で私は走り去った。
なれないヒールの靴だったけど、一度も転ばないで走れた。




→続きます

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